およそ1800年前の晋の時代の話です。若者の(1)秦桑さんとかわいい女の子(2)黄河さんは隣り合って住んでいて、(3)幼馴染でした。互いに告白はしていないものの、愛し合っています。秦桑さんの家は貧しい豆腐屋さんで、黄河さんの家は裕福な家庭の(4)お嬢さんでした。秦桑さんは毎日、豆腐作りに励んでいます。黄河さんは二階に設けられた女の子の(5)専用部屋で、(6)刺繍をしたり、(7)琴のお稽古などをしたりしています。二人は会って愛を語りあうチャンスはありません。でも、秦桑さんは、毎日、豆腐を作りながら、黄河さんの部屋に向かって歌を歌っていました。そして、黄河さんはいつも(8)窓際に座って、仕事をする秦桑さんの姿を見ながらその歌に(9)聞き惚れていました。二人の若者は、言葉を交わさなくても、このようにして結ばれる未来に憧れていました。春が過ぎ、夏が来ました。二人のことは、とうとう黄河さん親に知られるところとなり、二人の仲は無理矢理に(10)引き裂かれてしまいました。失意のドン底に落ちた秦桑さんは、それでも一日も欠かすことなく、黄河さんの窓に向かって歌い続けていました。
黄河さんも相変わらず秦桑さんに見えるように窓際に座っていました。しかし、秦桑さんは次第に(11)やせ衰えていき、秋のある雨の日、秦桑さんはとうとう倒れて、息を引き取ってしまいました。そして何日か経ちました。秦桑さんが死んでしまったことを知らない黄河さんには、相変わらず豆腐屋さんから秦桑さんのしみじみとした歌声が伝わってきます。でも、このところ秦桑さんの姿を見ていなかった黄河さんは、不思議に思って家から抜け出し、豆腐屋へ駆けつけました。そして、目の前の光景に涙が止まりませんでした。秦桑さんの歌声はこのときになってぴたりと止まりました。
最後のシーンについてですが、もう一つの言い伝えもあります。秦桑さんは最後の最後に黄河さんに会えず息が止まっていましたが、心臓だけは止まりませんでした。数日経っても止まりません。二人の交際を禁じるため親戚の家に行かせられていた黄河さんは、家に戻ってから久しぶりに秦桑さんに会いに行って見ると、思いも寄らない様子を見て、泣き崩れてしまいました。そして、そのとき、秦桑さんの心臓はあたかもほっとしたかのように、止まりました。
中国では、この物語から次のことわざが生まれました。最後を確認するまではあきらめないという意味の「(12)秦桑を見るまでは涙を流さず、(13)黄河を見るまでは心臓が止まらない」です。普段では、「黄河を見ないと心臓が止まらない」がよく口にされています。
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