6月6日、7日、中国では大学の全国統一入学試験が行われ、880万人が受験しました。受験生(1)の数は史上最高で、その中の30%、260万人が合格する予定です。
この2日間、北京では151カ所の高校が試験場(2)に指定されました。その玄関には警戒テープが貼られて、受験生以外の立ち入りが禁止され、近くはパトカー(3)や救急車が待機しました。近くの道路や交差点では、普段の倍ぐらいの警察官が配置され、車の誘導に追われていました。受験生が渋滞に巻き込まれた場合、122番に電話をすると、近くをパトロールしているパトカーが試験場まで送ってくれました。大学入試期間中、北京市政府が第3ランクの応急対策(4)を取ったのです。応急対策としては、ほかに、試験場の周りの工事の一時中止、車のクラクション(5)の禁止なども盛り込まれました。試験場では初めて教室にカメラを配置し、指揮センターでモニター(6)を通じて会場を監視しました。新聞などのメディアも、きめ細かな配慮をしました。試験期間中に食べることを勧める一日三食の消化吸収の良いメニュー(7)を出したり、試験場近くにあるレストラン(8)の名前や価格などを紙面に公表したりしていました。そして、無料で受験生を送るボランティアのタクシーも増えました。親の中には、朝、受験生の子供を試験場まで送り、午後試験が終わるまで、試験場の外で待つ人が少なくありません。家が遠くて、昼間は学校の近くでテントをはって(9)、子供に昼寝をさせる親もいました。
これらの大学受験生が無事に試験場に入るため、社会全体が動員されました。なぜなら、今の中国では、大学入試は人生の最初の岐路で、安定した人生を過ごすには、大学に入学することが唯一の道だという意識が深く根付いている(10)からです。中国では日本のように専門学校の教育が進んでいませんし、アメリカのように高校期間中、大学の入学を数回受けられるシステムにもなっていません。また、多くの企業の社員募集の条件は、ほとんど大卒以上になっています。こうした条件の下で、中国の高校生たちにとって向こう岸まで渡れるのは、大学受験という一本の丸木橋(11)しかないとも言えるのです。試験の初日、プレッシャーのあまり、熱を出して体調を崩してしまう子も出ました。では、親たちはどうでしょうか。毎日戦場で戦っているような状態が、子供の成長にとって本当にいいのかと悩んだ(12)ある親は、「高校三年生保護者のブログ圏」と題したブログを出しました。すると、1カ月足らずでアクセス量(13)が150回を越えたとのことです。ブログでは、共通の苛立ちや悩みなどを報告し合ったり、大学試験に関する情報を交換したりしていました。中には、中国の大学試験制度の改革に関する次ぎのような願いも書かれていました。「このブログ圏内の保護者たちが、リラックスした気持ち(14)と広い視野を持って、子育て(15)問題を討議しあえる日が一日も早くやって来ますように」と。
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