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「煎餅」の達人
   2006-05-11 16:12:07    cri

 どんな職(1)でも全力を投じる姿は、人の心を惹く力を持っているようです。

 私が毎日通っているバス停(2)・豊台駅で、40代の男性がガラス張りの屋台(3)の向こうで、人目を気にせずひたすら下を向いて薄い煎餅を焼き(4)続けています。私がここを通り始めて6年経っていますが、彼が纏っている白い仕事服はいつも真っ白で、髪の毛もいつもキチンとしています。屋台のガラスもいつ見ても清潔で、ちり一つありません(5)。朝7時ごろになりますと、若者たちがここで出来上がりの「煎餅」を待ちます。ビニール袋に包まれた四角いハンバーガー(6)のような形した「煎餅」を持って、朝食としてバスで食べながら仕事場に向うことになります。

 中国の「煎餅」は小麦粉、トウモロコシ粉などをのり状にし、鉄板に薄く伸ばして焼いたものを指します。一つの面にはかき混ぜた卵を載せてからゴマをかけます。もう一つの面には味付けとして味噌(7)のほか、韮の花でできた味噌などを塗りつけてから長ネギや香菜(8)を入れ、さらに中国風の焼きパン「油餅」(9)を載せた後三つ折にすると出来上がりです。2分程度で完成するが、一枚2元(日本円30円)という安さと素朴な味で広く親しまれています。レストランではなく道端の屋台でしか食べられない下町の食べ物と言えます。それを焼く道具としてはドラム缶の中にガスボンベ(10)を入れ、上に平らで丸い鉄板を載せるだけです。

 「煎餅」を焼く風景は北京でよく見かけますが、この男性ほど、清潔感のある屋台は少ないと思います。私はつい最近勇気を出して彼に話かけ、王さんという名前だということが分かりました。王さんは仕事の合間を見て答えてくれましたが、10年前に会社をやめてこの仕事を始めたとのことです。ラッシュアワーを狙って、毎朝6時から8時半まで2時間半出てきて、平均して毎日100枚を焼いています。月に150元(日本円の2250円)の屋台の費用を出した後は残りの殆どを中国の名門校・清華大学2年生の一人娘の学費などに当てているそうです。自分の性格が馬鹿真面目な面があって、サラリーマンより、今の方が気持ち的にずっと楽だと笑いながら話してくれました。お客さんからお金を受け取る時は、手で受け取るのではなく、鉄製のもので挟んでお金の箱に入れるのが印象的なのでした。「他の人より調味料の種類も多いし、ゴマ(11)を入れるのも初めて見た」と褒めたら、「やるとしたら最善を尽くさなくちゃ」と真面目な顔になりました。「ネットに載せるため、ポーズを取ってください」と写真を頼んだら、雑巾(12)で釜のまわりやガラスを素早く拭いてから、すごく照れた感じでカメラに向きました。ポーズを付けすぎた格好だったので、私は「もう一枚」と言ったが、お客さんが来てしまったので、王さんはそれっきり目をこちらに向けてくれませんでした。

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