北京で生活していた、ある日本の友人が、「タクシーに乗る(1)のは、中国語会話を練習する最高のチャンスだ」と感心して話したことがあります。何故かというと、まずタクシーのドライバー(2)が日本語が出来ないことで、こちらが一生懸命中国語で話すように強いられることと、ドライバーは外国人の片言(3)の中国語でも快く話に応じてくれるからだそうです。実は、中国、特に北京でタクシーに乗るときは、乗客はずっと黙る人は少なく、運転の邪魔(4)にならない程度で、ドライバーとちょっとしたおしゃべりをする(5)のが普通のようです。
中国でタクシーが復活したのは80年代初期で、まだ20年ぐらいしか経っていません。このためか、ドライバーは50代以下の人が多く、60代はあまり見かけません。さまざまな(6)お客さんと付き合っていることとも関係があるのでしょうか、ドライバーはみんなものの見方が鋭いようで、物価など身近な話題だけでなく、国内外の政治や経済などについても、自分の考え方を持っています。そして、何についても率直に、ユーモラスな口調で話してくれることが多いのです。中国へいらした日本の方にとって、中国人が日本人にどんなイメージを持っているか知りたいことと思います。もし、タクシーに乗る機会がありましたら、是非ドライバーに尋ねることをお勧めます。回答はそれぞれだと思いますが、きっと一般市民としての本音が得られるでしょう。
もちろん、時にはドライバーの熱心さに戸惑ってしまう(7)こともあります。次の例からは北京のタクシードライバーの性格を垣間見ることができると言えるでしょう。ある女性が引越しの荷物を持ってタクシーに乗っていると、携帯電話にショートメール(8)の着信の音がしました。それは友人からでしたので、そのまま返信に夢中になっていました。ドライバーは、お客さんがなにも言わずに真剣な表情でボタンを押している(9)ことが気になってたまらなかったためか、しばらく経つと、急に大きな声で、「彼氏からでしょう。なんで直接携帯に出て(10)あげないの?喧嘩だったら帰って仕返せばいいじゃないか。引越しまでする必要は無いよ。どんなことでいじめられたの?」と矢継ぎ早(11)に話しかけてきました。客の女性がこれはただの友人とのやり取りだと説明しようとすると、また、向こうからの返事の着メロ(12)が鳴り出しました。途端に(13)、このトライバーは「速く出なさい!(14)」と、大きな声で促したのです。
このように、北京でタクシーに乗ると、新鮮な感じ(15)を受けることがよくあります。日本のみなさん、北京で中国語会話の練習をするには、タクシーに乗っているときに、軽い気持ちでドライバーとおしゃべりすることが、いい方法の一つかもしれませんよ。
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