ロシアのメドベージェフ大統領は16日、モスクワを訪問しているイタリアのナポリターノ大統領との会談で、新たな欧州安保体制の構築を目指して、「全欧州の首脳会議」を開くことを改めて提案しました。メドベージェフ大統領がこの会議の開催を提案するのは、今年に入って2度目となります。そこには、どんな背景があるのでしょうか?
メドベージェフ大統領は、今年6月のドイツ訪問で、全欧州の首脳会議を開催することを初めて提案し、この会議で、ヨーロッパの安全を守る新たな欧州安保条約を締結することを求めました。また、7月15日に行われたロシア外務省の会議でも、「アメリカがポーランドやチェコで実施しているミサイル防衛システムの配備計画は、ヨーロッパで数十年にわたって守られてきた安全体制を破壊している」として、ヨーロッパおよび世界の安全秩序を変えなければならないと強調しました。その対策として、新たな欧州安保条約の締結を提案し、開放された欧州・大西洋地域安全体制の構築を主張しました。
ロシアは、ヨーロッパとアジアにまたがる国として、昔からヨーロッパを重視し、外交政策でもヨーロッパとの関係を優先してきました。これに対し、ヨーロッパの指導者も、この地域ではロシアの協力なしには真の安全はあり得ないと見ています。しかし、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)の拡大により、ロシアのヨーロッパにおける戦略的空間は圧迫されています。とくに2007年から、アメリカが東ヨーロッパで進めているミサイル防衛システムの配備が、ロシアの安全を脅かす問題とされています。したがって、ロシアは、国土の西部を守ろうと、新たな欧州安保体制の構築を急務としています。
また、メドベージェフ大統領は、最近の演説で欧州の新たな安保体制の構築や安保条約の締結によく触れていますが、これは、ロシアが、現在の安保体制に自信を失っていることを示しているといわれています。ロシアは、ヨーロッパ各国の関心に配慮した新たな安保体制の構築を期待しており、これが、全欧州の首脳会議を提案する主な理由と見られています。
しかし、欧州連合の拡大にともなって、ヨーロッパ諸国の需要が多様化しています。とくに、欧州連合に新たに加盟した一部の国は、ロシアに対し、不信な態度を持ち、ロシアから遠ざかっています。したがって、ロシアが提案している全欧州の首脳会議の実施は難しいと見られます。(翻訳:鵬)
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