ロシア国防省報道局は1日、ロシアがグルジアのアブハジア地区に対して増派した平和維持部隊がすべて所定位置に到着したと発表しました。これを受け、グルジア外務省は同日、ロシアのグルジア駐在大使に緊急出頭を求め、抗議を表しました。こうした動きにより、ロシアとグルジアの関係は再度緊張状態に陥りました。
ロシア外務省は先月29日に声明を発表し、アブハジアに駐留しているロシアの平和維持部隊を3000人に増やすと明らかにしました。この声明では、この行動の目的は当該地区に対するコントロールではなく、地元住民の基本的権利の保護にあると強調しています。また、グルジアがアブハジアのコドリ峡谷に武器や燃料、食品、軍用物資を輸送し、部隊を結集して軍事行動を起こそうとしているとし、非難しています。さらに、「もしグルジアが武力に訴えるなら、平和維持部隊は自身の安全と地域の平和を維持するため、しかるべき措置をとる」と警告しています。
ロシアのアブハジアに対する平和維持部隊の増強は、グルジアからの反対を受けているだけでなく、国際社会の注目を浴びています。グルジアのサーカシヴィリ大統領とウクライナのユシチェンコ大統領は先月30日、共同声明を発表して懸念の意を示しました。この共同声明は、ロシアがアブハジアや南オセティアとの関係の地位を引き上げたことが、グルジアの領土に脅威となったとしています。また、アメリカ政府もロシアの平和維持部隊の増強に注目を寄せています。
ロシアとグルジアはアブハジアと南オセティア問題で、長年、衝突を繰り返しています。アブハジアはグルジアの自治共和国ですが、1992年、自ら独立を宣言し、グルジアの中央政府と軍事衝突を引き起こしました。1993年、国連がアブハジアに視察団を派遣し、1994年には、ロシアの平和維持部隊がアブハジアに駐留し始めました。一方、南オセティアはロシアの北オセティアに隣接しているグルジアの自治州です。この地域はソビエトが崩壊した後に独立を宣言し、グルジア中央政府と長期にわたって対抗しています。
1992年、ロシア、グルジア、北オセティア、南オセティアの四者が衝突解決のための合同監督委員会を設置しました。これと同時に、ロシア、グルジア、南オセティアの三者からなる混合平和維持部隊が、紛争エリアで平和維持任務に当たることになりました。
ロシアはアブハジアと南オセティアの独立を正式に認めていないものの、この二つのエリアはいずれも経済面や外交面でロシアからの支持を受け、グルジア中央政府から独立した自治地区になっています。このため、ロシアとグルジアの両国関係は長年、対立傾向にあります。
関係筋は、最近のロシアとグルジアの関係悪化は今年2月、コソボが一方的に独立宣言をしたことと強い関係があると見ています。コソボが独立を宣言した後には、欧米諸国がコソボの独立を認めたことへの報復として、ロシアが南オセティアとアブハジアの独立を認めるのではないかという憶測もありました。
さらに、今年3月、ロシアはグルジアの主権に挑戦し、グルジアの許可なく、この二つのエリアにロシア大統領選挙の投票箱を設置し、一旦緩和した両国関係を再び緊張状態に陥らせました。
分析筋は、「アブハジアと南オセティア問題はグルジアの主権と領土保全にかかわっているため、グルジアは必ず自身の核心的利益を守るだろう。しかし、一方では、ロシアはこの二つのエリアに対して、複雑な感情を抱いており、この問題は両国関係のしこりになっている」と見ています。また、グルジアのNATO・北大西洋条約機構への加盟やロシアのWTO・世界貿易機関への加盟など一連の問題でも食い違いが見られており、両国関係がいくらか改善しているものの、何かをきっかけに、すぐに緊張状態に陥りやすいことも事実です。
この度、ロシアがアブハジアに対する平和維持部隊を増強させたことが、両国関係にどのような影響を及ぼすのか、今後の動きも注目されます。(翻訳:Yan)
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