インド外務省のホームページで10日、IAEA・国際原子力機関との印米原子力協定の実施についての保障措置協定草案が発表されました。これによって、インド政府は印米原子力協力協定実施の重要な一歩を踏み出しましたが、政治界では大きな波紋を呼んでいます。
インド政府が発表した保障措置協定草案によりますと、国際社会がインドの原子力貿易を許可するのであれば、インドはIAEAによる民用核施設の監督を受け入れると共に、国際供給国から購入した核燃料を全て民用の原子力生産に使うことを保障すると約束しています。それに対応して、IAEAはインドの民用核施設に燃料供給を保障し、インドの燃料戦略備蓄を許可することになります。
草案の発表は直ちにインドの政治界で大きな波紋を引き起こしました。特に政府が左派政党に協定草案の内容を明らかにしなかったことから、4年間にわたって政府を支持してきた左派政党は8日、その支持を撤回しました。それによって、インドの執政連盟は実質的に分裂したことになります。それと同時に、インドのムカジー外相は「協定草案はインド政府とIAEAが達成した機密文書で、正式に調印する前に一般公開することができない」と説明しました。また、左派が支持を撤回したことを受けて、ムカジー外相は「政府は、議会の信任投票を受けた後、IAEAとの保障協定の調印を目指していく」と述べました。しかし、その発言の翌日、インド政府はIAEAに協定草案を提出し、その草案の内容を発表しました。
そのため、インド政府は、野党のインド人民党と左派政党から強い批判を受けました。インド人民党のアドバニ党首は「政府は、印米原子力協定の問題で人民に嘘をついた。もう信頼できない」と述べました。
左派政党も政府の言動は一致していないと指摘し、「政府は、信任投票の後に印米原子力協定の実施プロセスを推進すると国民を騙しながら、IAEAに協定草案を提出した」と述べました。
これらの批判に対して、インド政府の報道官は「インド政府がIAEAに協定草案を提出したのは、あくまでも手順にすぎず、双方が正式な協定に調印したことを意味していない。政府は、外相の話通りに、信任投票の後にIAEAと正式な協定に調印する」と明らかにしました。
また、ラヴィ上院議員は「執政連盟は信任投票で必要となる272票以上を獲得できる自信を持っている」と述べました。
ところで、印米原子力協定について専門家は「インドのこの行動は、行き詰まった印米原子力協定が復活することを意味していない。IAEAの支持を得ても、印米原子力協定を最終的に発効させるためには、原子力供給国45カ国による原子力貿易許可とアメリカ国会の許可が必要となる。アメリカでは11月の大統領選挙を控え、国会がまもなく休会となる。原子力供給国グループの各メンバー国の態度も依然明確ではない。そのため、印米原子力協定の主導権はすでにインドのところにはない。印米原子力協定の先行きはまったく見えない」と見ています。
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