アメリカの情報機関が23日発表したイラク情勢に関する報告書は、アメリカ政府にとって、イラクは手を焼くものになっているとし、アメリカの政界で波紋を呼んでいます。
報告書は、「今年1月に入ってから、イラクの安全情勢が緩和されつつあるものの、イラク政府は依然として『効果的に国内をコントロール』できないでいる。一方、イラクの治安部隊は、アメリカ軍の支持なしで単独で 行動できず、向こう6ヶ月から12ヶ月間でも、イラクの治安維持への貢献度は相変わらず限られている」としています。
また、報告書は、ブッシュ政権の軍隊増派計画はすでに成果を上げていると評価した一方、「アメリカ軍が期限前に撤退することは、イラクを混乱させる。かといってアメリカ軍の任務を武装勢力の取り締まりからテロリストの取り締まりに変えるなら、増派以来、米軍が獲得した進展は水の泡になるおそれがある」と警告しました。
マリキ政権について、報告書は、宗派間の食い違いをなくすことと、アメリカが課した一連の政治指標などを実現する能力を疑問視した上で、イラク政府が政治の和解を手にする前途が暗いとしています。その原因について、報告書は、「いままでイラク政府が政治和解で収めた成果は小さく、今後進展を得る見通しも立たない」と指摘した上で、イラク政府がシーア派の支持を得たものの、シーア派とスンニ派及びクルド人の間の対立を解決するのは難しいからだと分析しています。
また。この報告は、ブッシュ政権にもプレッシャーをかけています。匿名希望の高官は、この報告を読んだ後、「われわれが取り組んできたことは機能していなかった、と感じた。しかし、私たちは諦めることができない。そうしたら情勢のより悪化を招くだろう」と感想をもらしました。ホワイトハウスの高官も、この報告書でまとめられた結論は、内部で行った評価から得た結論より厳しいと認めています。同時に、ブッシュ政権のイラク問題で犯したミスを利用して政権交代を図っている民主党は、この報告書をブッシュ政権を攻める根拠にしています。民主党のリード上院議員は、「この報告は、米軍がすでにイラク内戦の泥沼に入っていることを示しており、軍隊増派計画はブッシュ大統領が承諾した効果までほど遠い」との考えを示しました。民主党の指導者も、ブッシュ政権がイラク戦争を停止するように、引き続き働きかけていくと表明しました。
ところが、ブッシュ政権は、報告書の一部の内容を、イラク政策を堅持する根拠にしています。それは、「1月から始まった軍隊増派計画は、現時点では『一定的な』効果を取っている。もし、米軍が引き続きイラクで『猛烈な』行動を取れば、その安全情勢は来年になって緩やかに緩和される。同時に、イラクの治安部隊は単独で使命を果たすことができないことから、米軍の撤退は、新たな暴力活動と宗派間の対立を引き起こし、イラクを完全な混乱状態に陥らせる恐れがある」という報告内容です。ブッシュ政権も、この内容は速やかな米軍撤退を求める人たちを説得するのにいい材料になると見ています。
これに対して、専門家は、「米軍がイラクとアフガニスタンに同時に駐留していることは、米軍の兵力不足を招いており、現在のイラクにある兵力水準を維持するのが難しくなっている」と分析しています。(翻訳 朱丹陽)
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