パレスチナ自治政府のアッバス議長は15日、イスラム原理主義組織ハマスとの連立政府で財務相を務めたサラム・ファイヤド氏を非常事態内閣の首相に任命し、組閣作業の開始を要請しました。
ハマスがガザ地区全域を武力制圧したことで、パレスチナ自治区はハマス実効支配のガザ地区とアッバス議長の出身母体であるファタハの本拠地ヨルダン川西岸の二つに分断されています。
これを受け、前日の14日、アッバス議長はハマスとの連立内閣を解散し、ハマスの指導者であるハニヤ首相を解任し、非常事態を宣言しました。
アッバス議長が任命した非常事態内閣のファイヤド首相はファタハとハマスの両勢力に属さない独立系で、アメリカのテキサス大学を卒業し、会計学修士と経済学博士の学位をもつエコノミストです。
ファイヤド首相はヨルダンのヤルムーク大学で教師をした後、IMF・国際通貨基金の職員となり、長年勤務しました。
2002年、パレスチナ自治政府のアラファト議長がファイヤド氏を財務相に任命しました。
ファイヤド財務相はアメリカ、EU、イスラエルなどと太いパイプをもち、パレスチナに対する制裁解除問題と資金援助で才能を発揮する一方、自治政府では財政の透明化を推進し、清廉を保ち、内外から好評を得ています。
非常事態宣言を受け、アメリカ、イスラエル、EUはアッバス議長を支持し、ヨルダン川西岸への制裁解除を検討することにしています。
こうした情勢に対し、ハマスのズフリ報道官は「アッバス議長の非常事態内閣の首相任命は違法であり、クーデターである」と非難しました。
ガザ地区では現在、武力衝突が収拾し、ハマスは単独支配を実現し、治安回復を進めています。
一方、ヨルダン川西岸ではファタハが主導権をとって現地のハマス勢力を掃討しています。
西側のEUやアメリカ、それにエジプト、ヨルダンなどのアラブ諸国もいずれもアッバス議長を支持しており、ファタハが今後優勢を保つのではないかと見られています。
しかし、パレスチナの法律によりますと、非常事態の期限は30日間で、期限延長には議会で3分の2の賛成が必要であるということです。
その議会であるパレスチナ評議会ではハマスが多数で主導権をもっています。
そのため、非常事態内閣の組閣作業を早期に完了させることがアッバス議長が率いるファタハにとって急務となっています。(ジョウ)
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