パレスチナ自治政府を主導するイスラム原理主義組織ハマスは13日夜、パレスチナ解放機構主流派のファタハの、ガザ地区にある3つの治安部隊本部に対し、全面的な攻撃を行いました。これによって、12日に起きたこの二つの組織の衝突が新たな段階に入りました。現在、ハマスはガザ地区全体をほぼ支配下に置いています。一部の専門家はかつて、パレスチナの分裂を予言したことがありましたが、いまの情勢から見れば、その可能性がますます大きくなっていると見られます。
ハマスは13日、ガザ地域の全域でファタハとの交戦を続けています。ガザの中部では、パレスチナ治安部隊の指揮本部を占拠し、その後、難民キャンプも手に入れました。また、南部では、重要都市ハーンユニスをはじめ、数時間以内に沿海地域の主要都市を占拠しました。このほか、ガザ地区の北と南を結ぶ主要道路なども押さえました。メディアは、ハマスは現在、ガザ地区南北の重要地域をすべて手に入れ、残りはガザ市だけだとしています。13日付けの新聞『エルサレム・ポスト』はヘッドラインに、「ガザ地区は現在、パレスチナではなく、"ハマスチナ"の支配下に置かれつつある」との記事を出しました。
これについてパレスチナのメディアは、もし、ガザ地区が過激派のハマスの支配下に置かれれば、この地区に対してもっと厳しい封鎖措置がとられるだろうとしています。
アメリカ、ロシア、国連、欧州連合は中東和平のため、「暴力放棄、イスラエルの承認、パレスチナ・イスラエル和平合意の順守」という原則を打ち出しましたが、ハマス政権はそれを拒否しました。このため、西側諸国は、パレスチナ自治政府への支援を停止した上で、制裁を加えています。これによってガザ地区住民の3分の2が貧困状態に陥っています。もし、この地区に、より厳しい制裁や封鎖が行われれば、彼らの生活危機がいっそう深刻化すると予想されています。
また、ハマスがガザ地区を支配すれば、イスラエルの治安も悪化する恐れがあります。北部では、イランとシリアの支援を得ているレバノンのイスラム教シーア派組織・ヒズボラが活動しています。南部では、ガザとエジプトの国境をまたぐ武器の密輸が増えるとみられます。
これ以外に、パレスチナ・イスラエル和平交渉にも変化が生まれると予想されています。もし、パレスチナ自治政府のアッバス議長が、パレスチナを統率できなくなり、その政策もヨルダン川西岸やガザ地区で実施できなくなれば、イスラエルにとって、決断力があって信頼できる交渉相手を失うことになります。
ただ、専門家は、パレスチナは現在、内外の様々な要素からけん制を受けており、そう簡単に分裂することはないと考えています。国際社会は、パレスチナの指導機関として、パレスチナ自治政府しか認めていません。ハマスとファタハの衝突が起きたことを受けて国連のパン・ギムン事務総長と欧州連合の議長国ドイツはそれぞれ声明を発表し、パレスチナ自治政府のアッバス議長を支持すると表明しました。また、ハニヤ首相を含む政府高官は停戦交渉を呼びかけており、さらに、ハマスが条件付き停戦協議をファタハに提案しているため、パレスチナ情勢は、現在の危機を乗り越える可能性もあると考えられます。(翻訳:鵬)
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