パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスは12日午後、パレスチナ民族解放運動ファタハの所属する治安部隊にガザ地区からの撤退を要求する最後通牒を出しました。その後、まもなくして、ガザ地区におけるパレスチナ治安部隊の本部などを標的にした全面的な攻撃を始めました。パレスチナ自治政府のアッバス議長はハマスがガザ地区で政変を起こそうとしていると指摘しました。

　今回の衝突は始めから激しく、11日に停戦協定が調印されましたが、この衝突がエスカレートするのを阻止することはできませんでした。5日から交戦が始まり、12日までに衝突が全面化していますが、僅か一週間のうち、約100人が死傷しました。

　この二日間、ハマスとファタハは政府機関や双方の指導者に対する襲撃を行なってきました。両者を仲介しているエジプト側によりますと、ハマスとファタハは現在、ガザ地区における停戦についての交渉を拒否しています。

　こうした局面をつくり出した原因は主に、パレスチナ武装勢力の支配権問題にあります。

　イスラエルの占領に反対する中で、ハマスは主に、ガザ地区で自らの武装力を発展させてきました。しかし、ファタハは自治政府における主導的地位によって、ヨルダン川西岸で影響力を拡大し、パレスチナ治安部隊の支配権を握りました。そして、去年、ハマスは執政を開始後、自ら執行部隊を作り、それを合法化しようとしています。その後、こうした執行部隊問題や、パレスチナ治安部隊の支配権について両者の間で論争が続いていました。ハマスとファタハの大規模な衝突はパレスチナ国内や地域の情勢に大きな影響を及ぼしました。

　12日の夜、アッバス議長はファタハ中央委員会緊急会議を開き、ファタハ系閣僚に連立政府から撤退するよう要求することを決定しました。この行為によってパレスチナ連立政府は解体の危機にさらされました。

　これによって、政府部門に対する援助プロジェクトの一部にも影響がでています。例えば、EU・欧州連合とパレスチナ財務省はこのほど、直接援助プロジェクトの覚書に調印しました。しかし、政府解体後は、援助を受ける主体が存在しないため、援助をうけられなくなっています。この援助はパレスチナ国民の生活や給料にかかわり、人道支援なども影響されることになります。これによって、パレスチナの経済状況も悪化していく可能性があります。

　今回の衝突はガザ地区の情勢にも影響を与えています。過激勢力はインターネットカフェや美容室など生活施設に対するテロ爆発活動をつぎつぎと起しています。ガザ地区の治安コントロールが失われていることで、アルカイダのような組織が現れ、中東地域の安定を脅かすことが心配されています。

　パレスチナ情勢の悪化については国際社会も懸念しています。国連のパン・ギムン事務総長は12日声明を発表し、衝突を直ちに中止するよう各派に呼びかけ、情勢の早期回復のため、アッバス議長の指導を全力で支持することを示しました。