ガザ地区情勢の急変を受け、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、14日夜、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を含む自治区全土に非常事態を宣言し、パレスチナ自治政府を解散し、これまでの自治政府を全面的に受け継ぐ「非常事態政府」を速やかに発足させると発表しました。これによって、アッバス議長が率いるパレスチナ民族解放運動・ファタハとイスラム原理主義組織・ハマスによる連立政権が崩壊しました。
アッバス議長はこの日、中東問題関係4者にこの決定を報告し、ガザ地区に国際部隊を配置するよう呼びかけました。
今年3月、ファタハとハマスによる連立政権の樹立が実現しましたが、その後も暴力衝突は解消できず、ハマスが政権に参加して以来、西側諸国によってパレスチナ政府への制裁が続いていました。その上で、パレスチナの内部闘争が激しくなり、ガザ地区とヨルダン川西岸地区は政治上、分裂しつつあります。
14日、ハマスはガザ地区におけるファタハの最後の軍事拠点を支配下に置き、ガザ地区での全面的支配を実現しました。アッバス議長の決定について、ハマス側のズハリ・スポークスマンは「事実上、何の意味もない」と述べました。ハマスの立法委員は「ハマスは、これからガザ地区で自ら治安対策を実施する。もちろん、ファタハと交渉することも考えられる」と語りました。一方、元政権のハニヤ首相は「政府活動は正常どおりに捗っていく」と述べました。
ハマスによるガザの全面支配と連立政権の崩壊により、周辺国家による数ヶ月間の和平努力は台無しになってしまいました。エジプト、ヨルダン、サウジアラビアなどのアラブ諸国は、今年の初めから、イスラエルとの和平プロセスの再開に向けて、ハマスとファタハの団結を推進してきました。一方、これらの国々は、アッバス議長を支持すると共に、ハマスが強硬姿勢を緩めることを求めていました。当面の情勢は、紛れもなく大きなダメージになりました。
現在、各方面は、ガザ地区の治安回復や、内部衝突のエスカレート防止に向けて尽力しています。アラブ連盟のムーサ事務局長は14日「アラブ連盟は15日、緊急外相会合を開き、パレスチナ情勢を検討する予定だ。イスラエルのオルメルト首相は、近々行うアメリカ訪問においても、ガザ問題を主な議題にしている。このほか、ガザ地区に、アラブ諸国が率いる国際部隊を配置する提案も関連計画に盛り込まれた」と述べました。
現在、エジプトは、ガザ地区周辺で警備を強化し、装甲車や大砲などの重装備を増設しています。イスラエルは、ガザ地区につながる重要な港を閉鎖し、警戒を強めるよう部隊に要求しています。当面の情勢の下で、各方面は事態の悪化を防ぐため、慎重な態度を取ると同時に、関連の会議や協議によって、効果的な対策を取ることに期待を高めています。(翻訳:コオリ・ミン)
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