国連安保理は30日、賛成10、棄権5、反対0でレバノンのハリリ元首相暗殺事件を裁く特別国際法廷の設置を決めました。これについて、ある国は、「この決議は、レバノン国内立法手続きに準じておらず、安保理が主権国家の内政に干渉する前例となりかねない」と懸念を表明しています。
アメリカ、イギリス、フランスなどが提出した決議案は、「ハリリ元首相の暗殺事件は、テロ事件であり、世界の平和や安全に脅威をもたらす」として、6月10日までに特別法廷設置の関連決議を採択するようレバノンに要求しました。また、「採択を拒否した場合、安保理は『国連憲章』の第7章により、決議の履行を強制し、各国の関係者からなる特別法廷を設置する」としました。
この事件は、2005年2月14日、ハリリ元レバノン首相一行22人がレバノン首都ベイルートで爆弾攻撃を受け、死亡したものです。国連の授権を受けた国際独立調査委員会の調査によりますと、レバノンとシリアの高官が暗殺に関わったものと判明しました。しかし、シリアは、これを認めていません。2005年12月、安保理は、暗殺事件を裁く国際法廷設置の決議を採択しました。その後、国連とレバノン政府が法廷設置に関して協議を結びました。ただし、協議は、レバノン議会が決議を採択してから始めて発効すると定めました。しかし、レバノン国内で、各党派が法廷設置について、意見が異にすることから、いまもまだ採択されていません。そこで、レバノンの多数派が連名で国連に書簡を送り、国際法廷の設置を許可するよう国連に要請しました。レバノンのシニオ首相も5月14日、国連のパン・キムン事務局長に書簡を送り、「法廷設置について、膠着状態に陥ったので、国連に拘束力のある決定をしてくれるよう」要請しました。しかし、レバノンのラフード大統領は、これに反対し、「法廷の設置は、国内の混乱をもたらす恐れがある」と警告しました。その点は、多くの安保理メンバー国も心配しているところです。
規定によると、安保理が決議を採択する場合、15のメンバー国のうち、最低でも9つの国が賛成した上で、5つの常任理事国がいずれも反対していないことが条件となります。今回の決議で、必要数をわずかに上回る賛成が得られたにすぎないという結果は、相当数の国が決議案の効果に疑いを持っていることを示します。ロシアや、中国、カタール、インドネシア、南アフリカは、レバノン国内の立法手続きを超越する行為は重大な法的、政治的な影響をもたらすとして、棄権票を投じました。ロシアのチュルキン国連大使は、「ロシアは、特別法廷の設置に反対しないものの、どのように法廷を設置するのかに関しては、異なった意見を持っている」と表明しました。
中国の王光亜国連大使は、表決の前に「特別法廷を設置するのは、レバノンの国内事項であり、法的な基礎は、レバノン国内の法律にある。よって、レバノン議会が憲法により、国内の法律手続きを進めるべきだ。これも、国連とレバノンが結んだ協議の中で規定されたものだ。しかし、決議がレバノンの立法機構を超えて、特別法廷設置を強制するとした。これは、一連の政治、法律問題を引き起こしかねないやり方であり、レバノンの国内情勢に不安定要素を与えかねない。これは、結局は安保理の権威を傷つけ、長期的利益をもたらさない」との意見を表明しました。(翻訳:李軼豪)
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