イラクの首都、バグダッド東部のサドルシティーで、23日、爆弾テロが相次いで起きました。これにより150人が死亡、238人がけがをしました。サドルシティーは、イスラム教シーア派の住民が集中している地区で、シーア派の指導者ムクタダ・サドル師が率いる民兵組織、マフディー軍が管轄している地区です。そして、スンニ派の武装勢力が度々、攻撃を行なう、派閥衝突が最も頻繁が起きる地域の一つとなっています。

　イラク戦争が終結して3年間、イラク国内では、武力衝突の静まる気配がなく、数多くのイラク国民が犠牲になり、イラク情勢の最大な被害者となっています。今日の時事解説では、これについてお伝えしましょう。

　国連が22日に発表した調査によりますと、今年10月に3709人のイラク国民が武力衝突により死亡、ひと月の死者の数としては2003年のイラク戦争以来最悪となっています。今年2月にシーア派の重要な聖地となっているハディモスクが爆破されたことをきっかけに、派閥間の対立が激しくなり、武力衝突が相次いでいます。アメリカのCNNの報道によりますと、11月20日から22日にかけての3日間で、バグダッド及び周辺で140体の遺体が発見されました。遺体は虐待を受けた痕跡があることから、派閥間の復讐によるものであることが分かっています。

　派閥衝突に加えて、アメリカ軍などの多国籍軍も地元住民の安全に脅威を与えていると分析する専門家もいます。イラク警察によりますと、イラク駐在アメリカ軍は、サドルシティー行きのミニバスを射撃し、4人が死亡、8人がケガをしました。また、反米武装組織がアメリカ軍をターゲットに襲撃を行うことにより、一般市民が巻き込まれ、犠牲者が出たケースもあります。

　さらに、組織的な犯罪もイラク市民を危険に巻き込んでいます。イラク政府が治安維持の力を失っている今、犯罪行為がはばかりなく行なわれています。今月14日には、警察の制服を着た武装勢力が100人以上の教育省職員を拉致するという事件が起き、世界を驚かせました。2003年、フセイン政権が崩壊して以来、誘拐や拉致がエスカレートする一方です。イラクにあるアメリカ大使館によりますと、イラク国内で毎日5件から、多いときには30件くらいの誘拐事件が起こっているそうです。今やイラクは、コロンビアやメキシコ、ブラジルなどの国を抜き、世界で最も誘拐事件の多い国といえます。

　専門家たちは、「イラク情勢が不安定なため、国民が安心して生活できない。各派閥の和解のため、イラク政府が速やかに、民兵組織を解散させ、石油問題を解決し、組織犯罪や腐敗を取り締まって、国家の安全を強化しなければならない。イラク情勢を左右しているアメリカも、対イラク政策を改善し、撤退に向けた動きを徐々に開始すべきだ。」と分析し、またイラクの周辺諸国やアラブ諸国、国際社会に対し、イラク国民に救いの手を差し出すよう呼びかけています。