イラクのマリキ首相が提案した治安回復計画に基づき、イラクの軍隊と警察、そしてイラク駐留アメリカ軍が14日、イラクの首都バグダッドで治安回復作戦をスタートさせました。これは、2003年のサダム政権崩壊以来、最大規模の治安回復活動です。
マリキ首相は、「今回の作戦は長期的なものであり、夜間外出禁止や個人の武器所持禁止などの措置を続行していく。このような厳しい措置を講じることを通じて、アルカイダの残存勢力などテロリストを徹底的に取り締まる」と宣言しました。
あるイラク軍の高官によりますと、約2万人のイラク軍、5万人の内務省所属治安部隊と数千人のアメリカ軍兵士が今回の作戦に参加しています。
今回の作戦の目的は、まずザルカウィ氏の死亡後のアルカイダによる報復活動を撲滅することです。イラク国防省の13日の発表によりますと、駐留アメリカ軍はこれまで52回もの襲撃を受け、イラクの治安部隊も67回襲撃され、263人のイラク国民がテロ事件で死亡したとのことです。
その第二の目的は、国民からの信頼を勝ち取り、新政権の政治的基盤を固めるには、治安情況を改善する必要があるからです。イラクの新政府発足以来、宗教団体間の衝突や暴力事件が後を絶たず、治安情況が悪化しています。これは、新政府の執政と各党派間の和解プロセスの妨げとなっています。
ブッシュ政権にとって混乱したイラク情勢を改めることは政治的に必要なことなのです。イラク戦争は、ブッシュ政権へのアメリカ国民の支持率を下げました。しかしザルカウィ氏の爆死により、国民の支持率がいくらか回復してきたことから、ブッシュ大統領は、今回の作戦実施を通じて国民の支持を改めて高めたいと狙っているのです。
今回の治安活動の規模はこれまで最大とはいっても、イラクとアメリカは、その目的を容易に果たすことは出来ないだろうと見られています。
これにはいくつかの理由があるのです。
まず、アルカイダのテロ活動は、ザルカウィ氏が死亡したことでなくなるはずがありません。ザルカウィ氏の後継者と名乗るアブ・ハムザ・ムハジル氏は13日、インターネットで報復実施の宣言を出し、強力な軍隊などを配置してあるバグダッドでも、アメリカ人とイラク政府の高官は安全ではなくなると警告したのです。
また、イラク領内で紛争が絶えず起きていることには、多くの原因があります。民族や宗教団体の間の矛盾は暴力活動が頻発する原因の一つですが、アメリカ軍による軍事的占領は、イラクの国内情勢を緊迫化させている根源だとされています。14日、スーニ派反米武装力は、インターネットで、アメリカ軍のトラックを爆破した映像を公開し、占領軍をすべて追い出すまで攻撃を続けるとの宣言を発表しました。
マリキ首相は、軍事活動に出ると同時に、民族的和解を推し進め、撤退に関するタイムテーブルをいち早く作成するようアメリカ軍に求めています。つまり、イラク人によるイラク統治をいち早く実現してこそ、イラクでは安定と発展が実現できると専門家は指摘しているのです。
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