イラク国民議会は20日、マリキ首相が提出した閣僚リストを承認したことから正式の政府が活動を始動しました。
これは、2003年のイラク戦争終結以来、初めての正式政府の発足です。
これについてアナリストはは「正式政府の発足は治安と安定の回復、国民生活の改善、外国駐留軍の撤回などにとってプラスとなる一方、宗派や民族の間の対立が継続し、治安情勢が深刻で地域情勢も不安であるなど一連の要因を受け、新政府は民族の和解、治安の回復、経済の復興など多くの課題を抱えている」と指摘しています。これまでの状況を振り返って見ますと、次の重要な点が上げられます
まず、イラク正式政府の組閣で宗派や民族の間の利益闘争により、閣僚人事の決定は長い時間がかかったことです
治安情勢の深刻化と組閣期限の影響を受け、新内閣リストの提出では重要なポストである内相と国防相の人事が決まらなかったことから、その人選の決定までマリキ首相とスンニ派のザウバイ副首相が内相と国防相をそれぞれ兼任することになっています。
これに対し、当日の国民議会会議でスンニ派の連合会派「イラク合意戦線」と「イラク国民対話戦線」の議員は投票をボイコットしました。また、「イラク国民対話戦線」のムトラク党首は「マリキ首相の閣僚リストは内相と国防相の人事が決定されないため、憲法に違反しており、宗派の利益に基づいた内閣は国家の分離を誘発するものだ」と指摘しました。
次に、イラクのシーア派、スンニ派、クルド人という三大勢力は対立が続き、フセイン政権が崩壊後、シーア派とクルド人が台頭し、スンニ派は主導的地位が失っています。
そこで新憲法の制定、正式政府の閣僚人事などをめぐり、各派は激しい闘争を展開してきたのです。そして、今年の2月には、イラク中部サマラのシーア派聖廟が爆破され、宗派対立が激化しています。
第三に、各勢力の武装解除が難しくなっていることです。マリキ首相はこれら勢力の武装解除を強調してきたものの、クルド人のタラバニ大統領は「クルド人の武装勢力は民兵組織ではない」と強調し、クルド人の武装解除に反対しています。また、スンニ派の「イラク合意戦線」は「正式政府のテロ対策には意見を留保し、閣僚リストの承認投票をボイコットした。その上、抗活動と暴力攻撃を区別するべきだ」としています。
第四は、イラク情勢は多くの点でアメリカの影響を受け、これは地域情勢にもかかわってることです。
アメリカは駐留軍の苦境から脱出を求め、イラク新政府による治安回復に大きな希望を寄せる一方で、シーア派主導のイラク政府とイランとの接近を希望せず、「イランはイラクのシーア派民兵組織を支援している」と指摘しているのです。つまり、核問題をめぐるアメリカとイランとの対立は今後のイラク情勢に影響を与えているのです。
この他、アメリカとシリアとの関係、1990年代のクウェート侵略戦争と湾岸戦争、クルド人の台頭へのトルコの懸念など、イラク情勢の安定に不利な多く要素が存在しています。
最後に、イラク国内では治安情勢の深刻化そ、大きな経済的損失が出ており、特に原油施設への攻撃により、去年の原油輸出額は60億ドル以上減少したことなどが大きく影響しているのです。
以上のことについて専門家は、正式政府に残された課題は多く、マリキ首相は、国家の利益から実行可能な措置を講じ、各種矛盾を解決してこそ、議会で表明した自由で、統一し民主主義のイラクを打ちたてて行くことができるのです。
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