イランのハタミ元大統領が現在アメリカを訪問中です。ハタミ氏は1979年イスラム革命によりアメリカがイランとの外交関係を断絶して以来、アメリカを訪問したもっとも有力な政治家となります。イラン核問題が最終の段階を迎えたこの時期のアメリカ訪問は、大きな注目を集めています。
まず、アメリカ政府はなぜ、ハタミ氏の訪問を許可したのでしょうか。周知のように、両国が国交断絶以来、アメリカはイラン政府要人の来訪を厳しく制限しました。ハタミ氏が核問題をめぐるアメリカとイランの対立が深まる最中に訪米することについては、アメリカの一部の政治家が反発しています。。一部の下院議員は、ハタミ氏が大統領在任中、アメリカがイランを「悪の枢軸」に位置づけたことを挙げ、このような元指導者の訪米を許可したのは、アメリカの政策に違反するものだと見ています。
さて、それではなぜ訪米を許可したのでしょうか。専門家によりますと、それはやはりアメリカ自身の利益のためです。今62歳のハタミ氏は1997年から2005年まで、イランの大統領を務め、柔軟な改革派指導者とされました。大統領在任中、ハタミ氏は、メディアに対し、より柔軟な報道環境を与え、より開放的な政治を求め、国際社会との対話を強めたいという一連の主張を打ち出しました。イランの核計画に対しては支持はするものの、西側とは対立の代わりに対話を行い、アメリカとも常に意見交換するよう主張しました。ブッシュ政府が、両国関係の冷え切っている中、ハタミ氏の来訪を許可したのは、イランの改革派との対話を止めないという姿勢を示したものと思われます。いわゆる、イランの改革派に友好の意を示すと共に、アフマディネジャド大統領を始めとする強硬派にも圧力をかけるというものです。
ハタミ氏のアメリカ訪問の目的はただ、本人が表明した「世界中の文明の対話を促す」だけなのでしょうか。ハタミ氏は二週間のアメリカ訪問のため、8月31日にニューヨーク入りしました。その日はちょうど、イランのウラン濃縮活動の中止に関する国連安保理の1696号決議に定められた期限の日です。イランはこの決議の受諾を拒否したため、アメリカはイランに対する制裁措置を取るよう安保理に呼びかけ、両国関係はきわめて緊張した状態に陥っています。この情勢の下で、イラン当局がハタミ氏をアメリカに派遣したのは、深刻な外交的対立を回避する戦略の一つです。ハタミ氏がアメリカで講演した内容は、イランの核問題に全く触れず、文明間の対話と衝突の話題に終始しました。イランはこのような曖昧な表現でアメリカを戸惑わせ、イラン核問題に対するアメリカの関心度を引き下げる、いわゆる引き伸ばし戦術を取っているのです。強硬な態度で対抗もせず、頭を下げることもしません。従来の立場を表すと共に、外交面の交渉も続け、それにより、国際社会からの同情を引き出すというもくろみです。
もちろん、アメリカとイラン当局は、ハタミ氏の今回訪問の真の目的を明らかにしていないため、以上の見方は分析に過ぎません。しかし、ブッシュ政府もイラン当局も、ハタミ氏のアメリカ訪問を妨げていないことから、両国関係の緊張度が高まっている中、双方はハタミ氏の訪問によって、相手側の態度を試したいという考えは明らかです。(? 傅?)
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