イラン国軍は19日から、5週間にわたり、陸、海、空軍が参加する大規模な軍事演習を開始しました。イランの国営メディアによりますと、20日、イラン国軍が射程距離80から250キロの地対地ミサイルの発射実験に成功しました。また、地対艦ミサイルの発射実験も行うということです。イランが、この時期に軍事演習を行うのは、なぜでしょうか?
イラン国軍のアシティアニ報道官は、今回の軍事演習の目的について、「イランの最新の防衛理念を紹介するため」と説明しました。また、「地域情勢が緊迫化している今、イランは、いかなる脅威にも備えるべきである」と述べました。さらに、「軍事演習は、イランの外交政策に合わせたものである」と明確にしました。
分析者は、イランのこの軍事演習は、二つの大きな理由があるとみています。
国連安全保障理事会が1週間前に採択した1701号決議により、1カ月あまり続いたレバノンのイスラム教シー ア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍との衝突は停止されました。その後、イランの首都テヘランで、レバノンを支援する大きな集会がありました。イラン側は、この停戦は、イスラエルの失敗とみています。分析者は、イランは、レバノンへの声援を改めて表明し、自らの軍事力をイスラエルに表すため、軍事演習を行ったとみています。
イランは、核問題について、重大な選択をしなければならない時期にあります。イランにとって、国連安保理が1696号決議で求めたウラン濃縮活動の停止期限が31日に迫っているほか、ロシア、アメリカ、中国、イギリス、フランスとドイツの6カ国が提示した、イラン核問題の包括解決案に対して、正式な回答を22日に提出することになっています。イラン外務省のアセフィ報道官は20日、「イランは、ウラン濃縮活動を停止する計画はまだない。国連安保理の1696号決議は、法的基礎が欠けているので、受け入れない」と表明しました。また、「イラン核問題の解決は、交渉によるものでなければならない」と強調しました。
分析者は、イランの指導者は、その強硬な核政策を支えるものとして、軍事演習を実施したとみています。また、軍事演習を、国連安保理の1696号決議で定められたウラン濃縮の停止期限が来る前に行ったのは、イスラエル、さらにアメリカに対抗できる軍事力を備えたことを表すためとみられます。今回の演習には、アメリカによる経済制裁または軍事攻撃に対し、イランの備えが万全であることを国内外に示す目的があるとみられています。
国連のアナン事務総長は20日、声明を発表し、イランが、6カ国による包括案に対して22日に回答することに賞賛の意を示しました。アナン事務総長は、声明で、「中東地域が危機に直面している現在、イラン核問題が解決されれば、中東地域、さらに世界の平和と安定に有利であるため、この問題で進展を得ることが非常に重要である」と述べました。
エジプトのムバラク大統領もこのほど、イランの軍事演習について、「軍事行動を取らないよう」アメリカに要求しました。ムバラク大統領は、「イランを攻撃すれば、中東地域、さらに世界全体の平和と安定を壊すことになる。アメリカとイランは、核問題を外交ルートを通じて、直接対話で解決すべきである」と述べました。これは、まさに、世界大多数の国の、イラン核問題に対する共通の願いでしょう。
|