アメリカ政府はここ数日、「イランがウラン濃縮を8月31日までに停止するよう求める安保理決議を順守しなければ、制裁決議の採択を求める」と強硬な立場を繰り返し、表明しています。
一方、EU諸国は慎重な対応を取っています。
イランでのウラン濃縮の継続が確実になった場合、EUにとって二つの選択肢があります。
一つはアメリカに協力して安保理でイラン制裁決議の採択を推進すること、もう一つは調停役を続け、交渉による問題の解決を求めていくことです。
世論は「EUは交渉による問題解決を模索していくだろう」と見ています。
EU諸国はイランのウラン濃縮継続に不満を表しているものの、制裁警告を繰り返しているアメリカとは異なり、強硬な対応を控えています。
フランスのドストブラジ外相は「イランの回答には満足できない内容があるものの、対話の継続は重要である。西側とイスラム社会との対立がエスカレートすることを防止しなければならない」と強調しました。
EUは「制裁を実施すれば、これまでのイランの強硬な立場が一層エスカレートし、国際原子力機関との協力を停止し、核拡散防止条約を離脱するなど過激な措置を取るだろう」と懸念して、現実的な態度を取っています。
イランは中東地域の大国であり、レバノン、イラク、パレスチナなどの問題で影響力をもっているため、対イラン制裁の実施は賢明ではないと見られています。
安保理常任理事国とドイツによる六カ国包括見返り案に回答した文書でイランのラリジャニ最高安全保障委員会事務局長は「真剣な協議を開始する用意がある」と表明しています。
また、アフマディネジャド大統領は「イランの核開発など一連の国際問題をめぐってブッシュ大統領とテレビ討論を行いたい」と提案しました。
世論は「イランはウラン濃縮継続の立場が強硬であるものの、交渉の余地がある。イランは核開発が民生用目的であると強調している。そのため、核拡散防止条約の枠内で開発と国際査察の両立が問題解決の鍵となっている。この点を認識しているEU諸国は問題の外交的解決が依然として可能であると見ている」としています。
EU諸国ではイスラム教人口が一定の規模に達しています。
イスラム住民の要望を無視し、対イラン制裁でアメリカに協力すれば、EU域内でイスラム教徒の反発が起こり、社会不安が誘発されるだろうと懸念されています。
更に、対イラン制裁の実施で原油価格の更なる高騰が必至であり、EUとアメリカの経済にマイナスの影響を及ぼすに違いないと見られています。
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