イスラエルはレバノンのシーア派組織ヒズボラに対する攻撃は13日間継続したものの、大規模な侵攻は予想された効果を収めていないため、外部からの軍事・政治的圧力が高まっています。
ここ数日、イスラエル軍の作戦状況が複雑になり、国内世論は軍事攻撃への期待感が弱まっています。
イスラエル軍はこの12日からヒズボラへの攻撃を開始し、レバノン空港、道路、橋などのインフラ施設、ヒズボラの拠点、武器庫、司令部を標的に大規模な空爆を実施し、数日前、「ヒズボラのおよそ50%の戦力を壊滅した」と発表しました。
一方、ヒズボラの反撃は衰えず、イスラエル北部を標的に毎日100発以上のロケット弾を発射しています。
これを受け、イスラエルの一部世論は「ヒズボラの司令部と軍事施設の多くは地下にあり、精確な情報が不足しているため、空爆だけでは効果的ではなく、地上攻撃が必要となっている」としています。
この数日、イスラエル軍の地上部隊は北部国境で小規模な侵攻作戦を実施しています。
これに対し、世論は「地上侵攻はリスクが大きい。ヒズボラは民兵のゲリラ組織であり、自国内の有利な地理的・人的条件に恵まれており、住民に紛れてレバノン南部の山間部で複雑な地形を利用してイスラエル軍を襲撃する。先鋭兵器で装備されたイスラエル軍は優位性の発揮が困難になる」としています。
イスラエルのハルツ参謀総長は22日、「軍事攻撃の終結はまだ数週間がかかる。ロケット弾によるヒズボラの反撃を完全に制圧することは可能ではなく、イスラエル軍は国境から北部へ掃討作戦を推進し、ヒズボラのロケット攻撃の精密度を低下させ、また、掃討に伴う大規模な空爆と侵攻により、反撃継続の甚大な代価をヒズボラに認識させる狙いである」と述べました。
イスラエルは軍事作戦での難関突破が困難な上、国際社会からの圧力も高まっています。
ヒズボラ攻撃で350人以上のレバノン人が死亡し、インフラ施設への空爆とレバノン人の大規模な出国避難が世界のメディアで報道されているため、イスラエル軍の侵攻への容認度が低下しています。
イスラエルの新聞「ハーレツ」は「民間人の大量死傷は戦略の大きな誤りに発展するだろう」と警告しています。
世論は「アメリカのライス国務長官が24日イスラエルを訪問し、問題の外交的解決が加速され、侵攻終結のタイムテーブルも討議されるだろう」としています。
イスラエルはヒズボラ侵攻でレバノン南部の再占領を目的とせず、国境地帯の治安維持とこの地方での管理権実現をレバノン政府に期待しています。
今回の侵攻がレバノンの現政権に動揺をもたらせば、北部国境の安全保障を求めるイスラエルの外交交渉の目的達成は不可能となります。
この点について、イスラエル世論は「レバノンとの紛争で最終的な解決ルートは外交交渉であり、軍事侵攻の結果は今後の交渉にかかわってくる。そのため、ヒズボラの壊滅は当面、第一の目標となっている。しかし、目標達成の良い方策は見当たらない」としています。
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