パレスチナ自治政府のアッバス議長は10日、ラマラで、民族の和解とイスラエルとの「2国家共存」などを柱とする政策文書の是非について7月26日に住民投票を行うことを発表しましたが、自治政府を率いるハマスはこれに反対すると表明し、また16ヵ月間続いた停戦協定を破り、イスラエルへの攻撃を始めました。こうしてパレスチナ・イスラエル関係はまたも緊張情勢に陥ってしまいました。
以上のべた政策文書とは、イスラエルに拘束されているパレスチナ各派の指導者が5月の11日に牢獄内で署名したもので、1967年に占領された領土でのパレスチナ国の建国と連立政権構築などを含む18の提案からなっています。十数日以来、PLO・パレスチナ解放機構の元主流派ファタハはこの協議についてハマスと協議してきましたが、ハマスはこれを拒否しています。
住民投票の7月26日の実施を発表した後、アッバス議長は記者会見を行い、この住民投票に積極的に参加するよう全国の人々に呼びかけました。
アッバス議長は、「住民投票は目的ではなく、手段である。パレスチナを内外の苦境から抜け出させるため、積極的に和解を求めるべきだ」と強調しました。その後、アッバス議長はガザ地区に赴き、パレスチナ自治政府の首相であるハマスの指導者ハニヤ氏、及びその他各派の指導者と会談をおこないますが、アッバス議長は、住民投票日までに、この決議について各派との意見が一致に達すれば、住民投票を取り消すと表明しています。
一方、ハマスはこの日、住民投票に反対するという立場を改めて強調しました。そしてイスラエル軍が9日、ガザ地区で何度も襲撃を行い、パレスチナ人9人とパレスチナ軍4人を死亡させたことを受け、ハマスはこれまで16ヵ月間も履行してきた停戦協議を破り、報復措置として、イスラエルにロケット弾を打ち込みました。また、この日、ハマスは、停戦協議の中止を発表し、今後もイスラエル国内で自爆攻撃を行うと警告しているのです。
政策文書について住民投票を実施するというアッバス議長の発表に対し、ガザ地区のハマスのズゥヘリ・スポークスマンは10日、「イスラエルによるパレスチナへの攻撃がエスカレートしている状況の下で、ハマスは圧力に屈服せず、原則と民族の権利を放棄せず、また、イスラエルを無条件で認めたりはしない」と強調しています。さらに、立法委員であるハマスのメンバーマスリ氏は、「アッバス氏の発表は、ハマスがリーダーする自治政府に対してクーデターを起こすことになることから、アッバス議長はその責任を取らなければならない」と話しています。
専門家は、「アッバス議長の住民投票実施の発表は、ハマスにイスラエルを強制的に認めさせ、パレスチナへの経済封鎖と政治的対抗を国際社会に緩和させて、パレスチナとイスラエル間の対話を再開させるためだ」と見ています。
一方、イスラエル川はこの発表に余り反応せず、イスラエルのメディアは、オルメルト首相の談話を引用して、「アッバス議長の発表はまったく無意味である。かの政策文書は、国際社会が認めた基本原則とは相当食い違うことから、将来、パレスチナとイスラエルの対話にとって基礎とはならない」としています。
このように、パレスチナでの住民投票には大きな懸念がもたれているのです。
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