ウィーンで開かれているIAEA・国際原子力機関理事会は昨日(8日)、エルバラダイ事務局長が提示したイラン核問題に関する報告を審議しました。ただし、アメリカとイランは強硬な態度を見せており、「アメリカとイランが核問題において対抗し合うことは共倒れになる恐れがある」と分析する人もいます。今日の時事解説はこれについてお話しましょう。
アメリカのシュルテIAEA駐在代表はその際、「イランはすでに原子爆弾10個に必要なウランガスを保有している。今は国連安保理が行動を起こす時になった」とした上で、「もし、イランが承諾しなければ、深刻な結果を招く」と強く警告しました。
この会議に出席したイラン代表団団長、イラン最高安全保障委員会のワイディ事務次長は会議後の記者会見で声明を発表し、「アメリカは他の国に苦しみを与えたと同時に、自分に苦しみをもたらした。アメリカがこの道を選ぶなら、われわれは徹底的に対抗する」と表明しました。
イラン側の強硬な態度に対し、アメリカは「軍事攻撃を含む如何なる選択も排除しない」と表明しました。しかし、多くの専門家は「アメリカがイランに軍事攻撃を行う条件は整えていない。まず、イランの原子力施設は全国各地に配置され、また、地下施設として深く埋められていることから、一般的な軍事行動が効を奏することができない。このほか、イランはホルムズ海峡封鎖など非軍事的な手段を通じて、西側諸国の石油供給ルートを遮断することができる。更に重要なことは、イランに軍事攻撃をすれば、イスラム世界の反米感情を激化させ、アメリカがこのために大きな代価を払うだろう」と分析しました。
イランはOPEC・石油輸出国機構の2番目の石油生産国であり、原油輸出が日量250万バレルに達しています。アメリカの専門家は「もし、イランが原油輸出の日量を50万バレル減少すれば、世界の原油価格が100ドルを突破する可能性がある。これは西側諸国ひいては全世界の経済に大きな影響を及ぼすことになる」としています。
一方、軍事攻撃でも経済制裁にしても、イラン側も大きな代価を払うことになります。イランの石油輸出量は全世界需要量の3%しか占めませんが、イランの石油輸出収入がその輸出総収入の90%を占め、政府予算収入の50%を占めています。石油輸出への依存が高く、イランの経済はきわめて弱体だと言えます。また、ここ数年、イランは失業率とインフレ率の上昇に直面し、海外資金の導入を通してこれらの問題を解決する必要にせまられています。
以上の原因によって、多くの国と世論は各方面が冷静に対応し、イラン核問題を深刻化させず、IAEAの枠組みの下での平和解決を求めています。
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