イラン核問題の打開を図るため、イランのモタッキ外相は20日、ブリュッセルのEU本部を訪れ、また同日、イランとロシア両国の代表はモスクワで会談を行ないました。イランの外交は実質的な成果は得られなかったものの、今後のイラン核問題の打開に窓口が開かれたと見られます。
イランのモタッキ外相はブリュッセルで、EUの対外関係担当のフェレロワルトナー委員や、共通外交・安全政策担当のソラナ上級代表とそれぞれ会談を行なった後、記者会見し、「イランは核燃料生産の面で譲歩する用意があり、ロシアでウラン濃縮を行うという提案を検討すると表明する一方で、イランは核に関する研究を引き続き行なうと強調しました。
モタッキ外相はまた「イランが原子力の平和利用という原則に背いたと立証できる証拠は何一つなく、西側諸国が安保理を通じてイランに対する制裁を求めるやり方は誤ったものだ」と指摘した上で、「脅威の時代はすでに過ぎ去った。安保理は一部の国の道具になるべきでない」と強調しました。
また、EUのフェレロワルトナー委員のスポークスマンは記者会見し、「核計画の中止を改めてイランに呼びかけた。しかも、イラン核問題に外交的解決を求める余地は依然として存在する」と表明すると共に、「EUはイランを孤立させようとせず、イランも自国を孤立させないよう希望する」と述べました。
一方、ソラナ上級代表は記者会見の際、ムタッキ外相は新たな提案を何一つ出しておらず、イランの実質的立場には変化がないとした上で、IAEA・国際原子力機関が3月に理事会を開くまでに立場を変えるようイランに呼びかけ、「さもなければ何事が起こるか、イラン政府が知っているはずだ」と述べました。
これと同時に、イラン最高国家安全委員会のタシュ事務次長はモスクワで、ロシアでのウラン濃縮合弁企業の設置についてロシア安全会議のソボレフ事務次長と一回目の会談を行ないました。双方は今後もこの会談を続けていくことで合意しています。
これについてロシアのラフロフ外相は20日「現段階で会談の結果を論ずることはまだ早い」とコメントする一方、イラン核問題は「IAEAの枠組みで解決される可能性を依然として残している」との見解を示し、関係各国が受け入れられる解決案を模索するため、接触を保っていくようイランに呼びかけました。
また、イランテレビの報道によりますと、タシュ事務次長は会談前「ロシア側と合意できるとしても、イランは核に関する研究を続け、自らの『基本的権利』の面で一歩も退くことはない」と表明したということです。
イランの外交活動は実質的な成果には至らないものの、核問題が、国家の危機につながることを、イランが望んでいないのは明らかです。イラン、ロシア、EUはいずれも交渉を続けていく用意を示しており、3月6日のIAEA理事会までに各国の外交活動が一層活発になるとみられます。
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