アメリカ議会上院は1日秘密本会議を開き、イラク戦争開戦前の情報歪曲と中央情報局工作員氏名漏洩事件をめぐり議論を行ないました。
今回の上院秘密本会議は野党民主党の強い要求で開かれたものです。共和党が多数を占めるアメリカ議会上院では議員の動議による秘密本会議の開催が慣習であるものの、今回会議は25年来共和党と民主党両党が協議せずに開かれた初の秘密本会議です。アメリカ国内の世論は「これは民主・共和両党の政治闘争がエスカレートした結果である」と見ています。
今回の上院秘密本会議は民主党のリード院内総務の動議を受けて開かれたものです。
リード院内総務はイラク戦争開戦前の情報歪曲と中央情報局工作員氏名漏洩事件で共和党上院議員の無作為を強く非難し、「ブッシュ政権は情報を乱用してアメリカをイラク戦争の泥沼に引きずり込んだ。共和党多数の議会はそれを黙認した」と指摘した上、秘密本会議の開催を強く要求しました。
民主党の要求で2時間半開かれた今回の秘密本会議を受け、共和党のフリスト上院院内総務は「民主党は上院をハイジャックした。こうしたやり方は上院指導層への軽蔑行為であり、私への侮辱だ。民主党はアメリカ国民を議会から追い払った」と憤りを示しました。
最近、民主党ではブッシュ政権への不満が高まっています。10月25日、イラクにおけるアメリカ軍関係者の死者数が2000人に達し、チェイニー副大統領の側近リビー首席補佐官が中央情報局工作員身元漏洩事件で司法妨害、偽証などの罪で起訴され、辞任し、議会上院情報委員会はイラク戦争開戦前の情報活動失態問題の解明に真剣に取り組んでおらず、また連邦最高裁判所の後任人事をめぐり、ブッシュ大統領は保守派のアリート連邦高裁判事を指名したなど、これらが共和党に対する民主党の攻撃の口実となっています。
最近、ブッシュ大統領は批判を浴びており、政権への支持率が長期低下傾向にあります。
今回の上院秘密本会議はイラク戦争開戦前の情報活動失態に対する段階的調査の継続を上院情報委員会に要求しました。
上院情報委員会は2004年7月、第1段階の調査を終え、500ページにものぼる報告書を提出しました。
この第1段階の調査ではイラク国内で大量破壊兵器が存在した証拠、またフセイン政権が国際テロ組織に関与した証拠、いずれも発見されませんでした。
会議で民主党は第2段階の調査を1年引き延ばしたと指摘しました。
会議の後、共和党と民主党は調査活動の進捗を審査する小委員会の設置に同意し、2週間以内の中間報告の提出を求めました。
今回の上院秘密本会議開催をめぐり、ブッシュ政権はコメントを発表しておらず、カーター元大統領は民主党に支持を表明しました。
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