「中国一"幸福な都市"杭州」2 経済成長がもたらす"ゆとり"
人工666万人の杭州市は浙江省の省都であり、政治・経済・文化の中心地であるが、自然資源は他の地区に比べ著しく乏しく、土地面積も小さい。にもかかわらず、昨年の杭州市のGDP(国内総生産)は4000億元を越え、一人当たり8000ドル以上と、他の追随を許さない経済成長を見せている。また今年5月に国家統計局が発表した08年1ー3月期の都市別所得統計で、杭州市のある浙江省は北京を抜いて、全国2位に躍り出た。(1位は上海)北京には株式投資家が多く、この時期の株式市場の低迷も大きな原因ではあるが、同地区の勢いを表す統計といえよう。
ある市民が、街角にある「ポルシェ」の販売店を指して、「ここは欧州の販売店より売り上げが大きいらしいよ」と誇らしげに教えてくれた。高級車の売り上げ高が市民の豊かさに直接結びつくわけではないが、杭州が「お金持ち」の多い町であることは間違いない。
今回の取材で、同市の共産党委員会書記の王国平氏に話を伺うことができた。同氏は1950年の四川省生まれ。2000年4月から、杭州市の書記を務めている。王国平氏は「来年、杭州市のGDPは10000元の大台に乗り、先進的な経済都市の仲間入りをする」と自信たっぷりに語った。「だが満足してはいけない。今後も努力を続け、世界の都市から学び続けていく」と続ける。
杭州市がモデル都市として、王書記は意外な都市の名を挙げた。中東の都市、ドバイだ。ドバイはアラブ首長国連邦の首都。石油依存からの脱却を図り、「産業の多角化」を早くから進めてきたドバイは、今や、破竹の経済成長を遂げ、中東の金融・流通・観光の一大拠点に成長してきた。この「無から有」を作り出してきた成長形態が、杭州の最大のモデルというわけだ。
「今後5,6年で市民一人当たりのGDPを20000ドルに引き上げる」と王国平書記。ハイテク産業と現代的サービス業を柱に2015年には世界的な工業都市の仲間入りを目指す。
もちろん、急激な経済成長は負の面ももたらす。昨年の杭州市の消費者物価指数(CPI)は3.5%アップ。中でも、食品関係は8%増と著しい上昇となった。住居費も値上がりを続けており、ある日本人留学生は「日本より割高に感じる」とこぼす。
だが、それでも街を歩く市民の表情には、どことなく"ゆとり"を感じるのは、自分達の町が中国でも有数の経済発展を遂げていることへの自信の表れかもしれない。
中国が世界に誇る大商人、胡雪岩(1823年ー1885年)を生み、彼を「故郷の偉人」として崇める杭州人には根っからの商売人の血が流れているのだろう。商売もうまいが、人と人とのコミュニケーションにも長けている。今回の取材中、何人かの「杭州人」と話をしたが、相手が外国人だからといって拒否反応を起こすのではなく、包み込むように受け入れてくれる、ちょっとした"人情"を感じた。
破竹の経済成長を続けていても、西湖の湖面のように穏やかでガツガツしたところがない……私が杭州の街を歩いていて感じた「心地よさ」はそんな杭州人の気質からきているのかもしれない。
|