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杭州市の町並み |
「人々が住みたい町」「旅行に最適な町」「都市"ブランド"が高い町」・・・。各メディアや国際機関が中国・杭州に与えた"称号"である。ある著名な雑誌は2004年ー2007年まで、4年連続で「中国幸福な都市ランキング」の1位に、杭州を選んだ。(雑誌「瞭望東方週刊」)
かつて「天上に天国あり、天下に蘇杭(蘇州と杭州)あり」とまで詠われた杭州は、今もまだ、中国全土の人たちの"憧れの都市"であり続けているというわけだ。
今回、私は4日間の日程で、この杭州を取材する機会を得た。テーマは、「杭州の人々は本当に幸福なのか?」そしてもし、人々が本当に幸福感を感じているならば、それは具体的にどういう点なのか、そのための地方行政の取り組みは?などなど、この都市に対する興味はつきない。
今回、市内の公園や住宅、大学キャンパスなど、様々な場所で、一般市民にインタビューする共に、同市の共産党書記、王国平氏の取材も実現した。世界に誇る観光地「西湖」の紹介など観光情報も合わせて、「一度は訪れてみたい」杭州の魅力をシリーズでお伝えする。
「中国一"幸福な都市"杭州」(1) 美しき西湖を楽しむ
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西湖 |
西湖の沿岸は遊歩道として整備されている |
白蛇の化身である美しい娘と眉目秀麗な書生が出会った美しい湖、西湖。この悲劇の愛情物語<白蛇伝>は中国では誰もが知っている民間伝説である。その美しい景色は、古くから多くの人たちを魅了してきた。かつてマルコポーロは、ここを「この世の天国」と絶賛したし、唐代の詩人、白居易は「杭州を離れぬのは、半分はこの湖があるからだ」と詠んだ。
朝早く、西湖のほとりに立つと、まるで時間が止まったような感じがする。私が訪れた日はあいにくの雨だったが、向こう岸の山々にうっすらとかかるガスが、また西湖の神秘的な雰囲気をかもし出しているような気がする。遊歩道には、数多くの市民が散歩を楽しんでいる。ある人はベンチで朝食をとり、ある人は運動着姿でジョギングに励んでいる。脇にあるお茶屋さんで軽食と中国茶を楽しむ人もいる。
周囲は木々に囲まれ、小鳥のさえずりが聞こえてくる。まるでニセモノの録音かと思うほどの大音量だが、飛び交う小鳥たちの数を見ていると、これが"本物"だと分かる。枝がササッと揺れ、何かが飛び出してきた。一匹のリスが枝を渡り歩いている。一歩外に出れば、人口666万、自家用車と自転車がひっきりなしに行き交う大都会があるのだが、この「静」と「動」のギャップが杭州の大きな特徴の一つだと思う。
西湖は、かつて銭塘江が東中国海に流れ込む前の浅い湾から生まれた。水域面積6.5平方km、深さは平均2.27m、最も深いところで5mとそれほど深くない。三方が山々に囲まれ、一方は町に開かれている。この湖を中心に、総面積59平方キロの観光区「西湖国家級風景名勝区」を形成している。
ここにやってきたら、3つのやり方で湖を楽しんで欲しい。一つは徒歩か自転車、もう一つはバス、そして船である。
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遊覧船で西湖を回る |
遊覧船でお茶を楽しみながら西湖観光 |
西湖の周囲には34ヶ所のレンタサイクルが設けられており、1時間10元(150円・デポジット300元)で自転車を借りられる。返却はどこのステーションでも可能だから、便利だ。自転車で風を切って湖の周囲を走るのは爽快そのもの。それはちょっと・・・という方はブラブラと徒歩で回るのもオススメだ。
また西湖一周バス(5元)や電動カート(10元)も周囲を走っており、「西湖十景」と呼ばれる「曲院風荷」や「断橋残雪」などを効率よく、見て回ることができる。
だが、西湖観光に欠かせないのは、船による観光だ。西湖の沿岸には、様々な会社が船を出しており、手ごろな乗船料で湖を楽しめる。手漕ぎボート(10元/時間)や電動ボート(45元/1人)などで、気の向くままにゆったりと湖上散策を楽しむのもいいし、各スポットを効率よく回ってくれる観光ボートに乗るのもいい。またボートは夜10時まで、営業しているから、少し雰囲気の違う「夜の西湖」を楽しむのもオススメだ。
水のある都市の風景は、都会暮らしにホッとする癒しを与えてくれる。破竹の経済発展を続ける杭州市に身を置いても決して息苦しさを感じないのは、この西湖があるからというのは間違いない。(朝倉浩之)
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