「遠くの親戚より、近くの他人」という言葉は日本にも中国にもあります。日本も中国も、昔から隣近所同士の助け合いというのは、庶民生活の大切な一部分でした。隣近所でちょっとした貸し借りをする、突然の雨で洗濯物を入れてあげる…なんて隣近所の助け合いは、以前、当たり前のようにありました。
ただ、日本では近年、特に都会で、この『ご近所さん』の付き合いが少しずつ減ってきて、隣近所に誰が住んでいるか、顔を合わしたこともないなんてことがあると聞きます。
実は中国でも、特に都市部において、隣近所の関係はここ数年で大きな変化が起きています。それには様々な理由があげられますが、その一つに中国における住宅の入手方法が大きく変わったことが挙げられます。
これまで、都市に住む人々は、自らの所属する単位(職場)から住宅の分配を受けていました。その結果、同じ職場の人々が共に集まって住むことになります。日本の社宅と同じですが、企業に勤めるほぼ全ての人が住宅の分配を受け、住宅内が一つの社会のように機能していました。ですから、隣近所に誰が住んでいるか、その家族はどうなっているか、互いによく知っていました。子供の出産や、結婚、そして、葬儀がある場合、お金を出しあったり、人手を出し合ったりして、密接な関係を保っていました。また、犯罪の防止などにもつながり、またご近所さん同士でともに子ども達やお年寄りに気を配りあうことも出来ました。ただ、一方で、互いにプライバシーがなくて困るというのもあります。
さて、こういった住宅の分配制度は1990年代に廃止され、人々は住宅を購入する、もしくは賃貸業者などを通じて借りるようになりました。都市部の市街地は一戸建てに住むことはできないので、分譲マンションに住むことになります。
分譲マンションに住むと、隣に誰が住んでいるか、職業は何か、互いに全く分からないまま住むことになります。居住環境自体はこれまでより随分良くなりましたが、隣近所の関係があまりにも淡白になることは、互いのプライバシーを尊重するという部分もありますが、決していいことだけではありません。
「ご近所さん」がこんな淡白な関係のままでいいのか・・。お隣の人の顔も知らないことでいいのか‥。そういう議論は日本と同じように、中国でも起きています。そこで、ここ最近は地域コミュニティの団結を強めようと様々な方策も講じられています。地域イベントの開催、例えば『地域祭り』の開催などもその一つです。ただ、こういったイベントに参加するのは、お年寄りや子ども達"だけ"にどうしてもなりがち‥。社会の中心として活躍する"働き盛り"の人たちも交えた地域の団結をどうやって生み出すか、それが『ご近所さん』復活のための鍵になるのではないでしょうか。
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