汪永晨さん(54歳)は、中国最大の国営ラジオ局・中央人民ラジオ局の女性記者です。1988年に、社会科学院の研究員のリスナーから、名勝地の頤和園の昆明湖の中に、ゴミが大量に捨てられているため、ゴミ拾いの作業を毎日しなければならないことを知り、また、取材先の青海チベット高原で殺されたヤクの死骸を目にしたことなどから、環境保護問題に記者としての責任感を感じ、「香山のもみじを助けて」「昆明湖にきれいな水を」などの番組を制作し、大変好評を得ました。
その時から、汪さんの人生が変わりました。植物、動物、川など大自然に目を向け、1996年に「緑家園」(緑の故郷)というグループを作りました。最初は環境問題に関心を持つジャーナリストと学者の集まりだったこのグループは、その後一般市民も参加するようになり、これまでの活動に参加した人はのべ数万人規模にのぼるボランティア組織になりました。参加者には、教師、学生、退職者、会社員、政府機関の役人など、環境保護に熱心な人ばかりです。
「緑家園」はこれまで、植物や野鳥の鑑賞、大木の保護、砂漠での植林、絶滅に瀕している動物の保護、無農薬栽培、記者サロンなどの活動を展開してきました。こうした活動が社会に認められ、2007年、汪さんは政府から「緑の人物賞」を受賞しました。彼女はその賞金2万元を中華環境保護基金会に寄付し、「緑家園教育基金」を設けました。
汪さんが特に心配しているのは、私たちの周りにある川です。彼女はよくこんな質問をします。「あなたの町には、自分が子供の頃と同じようにきれいな川は一本でもありますか」と。残念ながら、答えはほぼ100%「ありません」です。私たちの環境悪化の厳しさを裏付けるような答えでした。
「緑家園」は自然に親しんでもらい、町にある川にもっと注目してもらうため、毎週土曜日、北京の川を歩くプロジェクトを実施しています。川の歴史や水質、汚染状況、周辺の住環境などについて調査しながら、専門家からの説明を聞くといった活動内容です。また、2007年に、「10年間の川巡り」というプロジェクトを立ち上げており、怒江、金沙江、大渡河など西部にある大河を巡り、ダムの建設が環境や住民の生活に与える影響を重点的に調べることにしています。(文:王秀閣)
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