5月31日(水)は旧暦の5月5日。中国の三つの伝統的祝祭日の一つ、端午の節句です。中国の人々はこの日、ちまきを食べる習慣があります。
このちまき、昔はほとんど自分たちの家で作って食べていました。各家でそれぞれ違う味を持っていたわけです。でも今は出来合いのものをスーパーなどで買って帰り、それを茹でたり、蒸したりして食べるようになりました。
端午の節句の数週前から、店には、ちまきが出回ります。ちょうど、ちまきを選んでいた買い物客、王さんに話を聞きました。
「ちまきなら、やはりナツメ入りか、あとはアンコ入りのが美味しいですね」
中国のちまきは、日本と違って、中に具を入れます。地域によって異なった具が入りますが、特にナツメを甘く煮たものや、ツブ餡入りのものが多いようです。ただ、北京の人は甘い具に慣れていますが、南方では、ちまきの作り方に少しバリエーションが多く、漬けた卵の黄身を入れたり、塩肉を入れたり、甘いもの、塩味のものなどいろいろです。
さて、中国の伝統的な節句について研究する学者、王作楫(しゅう)さんは、端午の節句が、多くの伝統的な祝日の中でももっとも内容が濃く、また呼び名が最も多いものの一つだといいます。
「この日は、家を出て嫁に行った人が実家に戻りますから、女児の節句とも言います。また子供を連れて一緒に実家に帰ることから、子供の節句とも言うんで。さらに、実は漢方薬はこの日に取れば一番効き目があると言われますから、「薬王の節句」とも呼ばれるんです。あと、昔は師匠に感謝する日でもありました。」
端午の節句は、日本と違って休日ではありませんから、みな学校や職場で、ちまきを食べて祝います。北京のほとんどのスーパーで、ちまきが売られています。メーカーも大規模なものから、小さい店まで様々です。ちまき作りでもっとも古い歴史を持つと言われる老舗、「稲香村」では、今年260万個のちまきを生産したそうです。
「稲香村」のちまき工場を取材しました。製造はすべて手作業。白い作業服に身を包んだ作業員100人余りが手袋をはめた手で、器用に巻いていきます。4時間茹で上げた笹の葉は竹の籠の中に整然と置かれていて、すでに加工済みもち米や肉、ナツメなどの具がずらりと並べられています。
ちまきを作って10年以上というベテラン・馬健宝さんが巻き方を教えてくださいました。
「普通は二枚の葉っぱで一つのちまきを巻きます。先に二枚の葉っぱで円錐形を作ります。その中に、もち米、具、さらに、もう一度もち米を入れて包みます。そして、ネジアヤメの細長い葉っぱで縛ります。これでできあがりです。」
笹で巻かれたちまきは工場にある30個の鍋で3時間茹でられます。湯気が室内一杯にたちこめ、ちまき独特の香りが漂っています。
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