北京の胡同(フートン)や四合院といえば、古き良き北京を代表する場所として知られています。庭内には、樹木や草花がたくさん植わっているため、子供たちにとっては「楽園」でもあります。そんな「楽園」には、「虫の世界」があります。虫たちは、"北京っ子"の幼年時代に欠かせない仲間でもあるのです。
* 「花老道」:啓蟄という節気が過ぎると、冬ごもりしていた虫が目を覚まします。毎年、初めて四合院を訪れてくるのは、チョウチョウです。北京では、白いチョウチョウが一般的ですが、黄色い珍種は、「花老道」と呼ばれています。珍しい黄色の「花老道」を見ると、子供たちはすぐ手に捕まえようとしますが、なかなか追いつきません。こうやって、「花老道」はいつも静かな四合院を騒がせるのです。
* 「吊死鬼」:訳すと、「首吊り鬼」。とてもイメージしやすいように、エン樹の木の下にぶら下がるシャクトリムシのことです。害虫として子供たちに嫌がられる虫ですが、勇気のある子供は「吊死鬼」を捕まえて、アリの餌にします。こうすれば、「鬼退治」となって、達成感を感じられるのです。夏になると、緑色の「吊死鬼」をよく見かけます。
* 「紅辣椒」と「老子児」:トンボのことです。トンボ捕りは子供たちにとって、夏の楽しみの一つです。中でも、赤くて小さい「紅辣椒」と、青くて大きな「老子児」が一番人気です。子供たちは手作りの道具を使って、トンボ捕りに精を出します。
ほかには、〔虫曲〕々児(コオロギ)、花大姐(てんとう虫)、臭大姐(カメムシ)、洋剌子(ケムシ)、花牛(カミキリムシ)などが挙げられます。今や"コンクリートジャングル"へと変わりつつある北京では、子供が虫と遊ぶ光景がだんだん少なくなりました。これら虫の「あだ名」から、北京っ子たちの幼年時代がよく偲ばれます。今は姿を消した虫たちは、彼らにとって大事な思い出の一つなのです。(編集:コオリ・ミン)
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