一家の「財産管理」は、ここ数年で、中国の人々の間での関心事となってきました。新聞や雑誌には、多くの「財産管理」に関する広告も並んでいます。経済の発展に伴い、人々の懐が膨らみ、その結果、自らの財産をどのように管理運用するかに関心が高まっているというわけです。
中華全国婦女連合会と銀行が共同で財産管理に関して開いたセミナーを取材しました。ここで勉強しているのは、ほとんどが女性です。
北京の政府部門に勤める朱さんもその中の一人です。朱さんは、結婚前、お金の使い方がとてもいい加減だったそうです。しかし、結婚後、姑と一緒に買い物して家に帰ると、姑はいつもその日の支出をノートに記しているのを見て、自分も家計簿を作ることにしました。
いざ家計簿をつけてみると、必要でない買い物を時折していることに気づき、その後は、できるだけ、そのような買い物を避けることを心がけました。その結果、買い物の無駄が少しずつなくなってきたそうです。
その後、今度は財産の運用や管理にも興味が出てきました。しかし、その面については、あまり知識がなく、セミナーに通い始めました。朱さんの話です。
「これまでは、自分の日々の買い物の中で、無駄のない消費とは何なのかを考えてきましたが、プロの人なら財産をどう管理するか、本格的に勉強したいと思ったんです。実際の暮らしに役立てばいいなあと思って・・。」
朱さんと同じように、財産管理に興味を持つ人々は、中国で増えています。
40代の劉彦斌さんは財産管理の専門家です。子供のころ、親の収入は、衣食住の基本的な支出のほか、残ったお金はわずかでした。しかし、いま劉さんと奥さんの収入を合わせれば三人家族の生活費に加えて、少しゆとりがあります。
「私が子供のころ、親の収入は、月に数十元でした。財産管理といえば、いかに少ないお金で家族の生活を支えていくかということだったのです。今は収入がずいぶん増えましたから、今度は余ったお金をどう投資するかということが財産管理の目的となっています。今あるお金がもっと多くのお金になって、今後の生活が安定したものになればと思います。」
計画経済の時代には、医療も老人年金も、基本的に政府で負担していました。1990年代以降、市場経済の発展につれて、医療や年金は次第に社会化が進み、政府は基本的な保障を提供するだけとなりました。しかし今は異なります。劉さんはこういいます。
「財産管理をいかにうまく行うか、それは、各個人、家庭の生活のレベルに関わるものです。だから、すべての人々にとっても大切なんです」
豊かで安定した老後を送ろうとすれば、一人一人が早いうちに計画を立てなければなりません。加えて、社会の発展とともに、人々の物に対する欲求も高まっています。今や財産管理は一部のお金持ちのものではなく、広く一般の人々が考えていかねばならないものとなっているのです。
劉さんはこれまで、失敗した財産管理の例を少なからず見てきました。その主な原因は、「知識の不足」です。ある家庭は、自分達の財産について合理的な計画を立てなかったため、家計が悪化しました。例えば、無理なローンで消費する、むやみに不動産に投資するなどです。返済のために重い負担を背負って、最低限の生活さえ苦しくなることも多いようです。
そこで、劉さんら専門家は、財産管理のセミナーなどを開いて、一般の人々を啓発するほか、顧客の財産をかわりに管理する業務も始めています。
中国建設銀行個人金融課の責任者、馬梅琴さんによると、今、銀行はこれまでの預貯金のサービス改善に加えて、個人向け財産管理にも力を注いでいるそうです。ファンド、信託業務や、金、外貨の取引などを行なっていて、国内外に投資先を求めることで、顧客の財産形成を手伝っています。こうした業務はお客さんの間でも好評です。馬さんの話です。
「財産管理を銀行に依頼するお客さんがますます増えています。銀行側は毎年新しい商品を開発していますし、口座数も年々増えています。人々が財産管理をますます重視していることが分かります」
財産管理の需要拡大につれて、新しい資格が現れました。それは財産管理士です。中国では、年間収入50万元以上、つまり、700万円以上の家庭は約一千万世帯あります。一人の財産管理士が100世帯の財産管理を行うとすると、10万人が必要とされます。一度に、これだけの財産管理士が現れることはないですから、当分の間は、銀行の財産管理サービスが主流となると思われます。
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