むかしは、ソレンというところの牧畜民の家では、金持ちであろうと貧乏人であろうと、毎年も12月23日には、家々が火の神を祭った。この風習には一つのいわれがあった。
いつのことかわからん。山奥に一人の貧乏な狩人が住んでいた。
ある日、狩人は朝早くから出かけたが、なかなか獲物が見つからず、いくつもの山を越えて、へとへとに疲れた。そして午後も一匹のヤギを捕らえ夜の腹ごしらえにと思っていたが、なんとウサギ一匹も獲れなかった。そして日が暮れ始め、狩人があきらめ、うちへ帰ろうと思ったとき、一匹の小さな蛇が、スルスッとある洞穴へ入っていくのを目にしたので、蛇でもいいかと思って洞穴に近づくと、不意にいい匂いがしてきた。
「あれ?なんだ」と不思議におもった狩人が、試にと蛇が這ったあとの石ことをなめてみると、なんと甘い。そこで狩人は洞窟に入ったが、見ると中には多くの蛇がどくろを巻いていた。これを見た狩人はびっくりしたあとどうしたことが気を失ってしまい、その日、狩人は洞窟から出てこなかった。
さて、それから数日、或いは数年たったかもしれないある日の朝に、かの狩人が洞窟から出てきたが、急にこの洞窟に入ったとき、入口に置いていった自分の猟銃を思い出し、そこらを探したが、猟銃はすでにさびだらけだった。仕方なく狩人は入り口を出て辺りを見回したが誰もいない。しかし、遠くから人々が話し合っている声が聞こえたので、その声のする方に向かっていくと、多くの人がなにやらを話、笑い声までする。狩人が驚いたのは、人々が話しているのは人間世界の言葉ではなく、神の言葉なのだ。それにうれしいことに狩人にはそれが聞いてわかる。
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