「貧しい人よ。お前には鞍があっても、それをつける馬さえないじゃないか?しかし、それでも私よりましだな。私のいる家には、飼っている羊が多すぎて、大きな柵には入りきれなくなっている。しかし、私には一匹の羊もないのだよ」
これを聞いたその家の主は、驚きながらも話している言葉がぜんぜん分からず、首をかしげていたが、狩人は、それが人間社内の言葉ではないものの、自分が聞いて分かるのに驚いた。しかしその驚きを隠して、天井を見上げ、また何もなかったようにミルク茶を飲み始めた。
すると天井からまた声が聞こえた。
「みんなはこれまで代々、貧乏に耐えてきたが、もうこれ以上我慢することなんかないんだぞ。今夜にもあいつら貧乏人をいじめる金持ちらをやっつけるんじゃ」
天井からの声をまた聞いたその家の主はこれにまた驚いていたが、狩人はこの声は、先ほど自分に話しかけてきた火の神の声だということに気がついた。すると、天井から空に何者かが飛び立つ気配がした。
実は、それまで地元の牧畜民は火の使い方を知らなかったので、狩人はあの火の神のことを主に話した後、きっと何かがあると言って、その晩は、その家に泊めてもらうことにした。
と、次の日、草原には不意に強い風が吹き出し、貧しい人々の家は風で吹き飛ばさせそうになったので、みんなは外に出て、数少ない家畜を追って地勢が低いところに隠れたが、金持ちの家々はずべて風に吹っ飛ばされ、柵に飼ってあった多くの羊もちりちりばらばらに逃げ去ってしまった。
これを見て狩人は、これはかの火の神の仕業だと気がつき、このことを貧しい牧畜民たちに話した。これには牧畜民たちは半信半疑だったが、狩人はみんなに日の扱い方を教えた、やがて草原にはすばらしい緑の草が生え始め、家畜も徐々に増え始め、火を使えるようになり、みんなの暮らしは徐々に良くなってきた。そこでみんなは狩人の言ったことを思い出し、自分たちを豊かな暮らしへと導いてくれた火の神を祭るようになり、食事や酒を飲む前は、必ず火の神にお礼を儀式を作り、あの急に強い風は吹いた12月の23日を「火の神祭り」の日と決め、毎年のその日のいろいろな行事を行なうようになったとさ。
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