むかし、アラウィ、つまり、今のシーサンパンナに小さな村があり、じいさまとばあさまが住んでいた。じいさまとばあさまには子や孫もなく、また牛も持っておらず、水田もなかったので山の中腹の畑に穀物作って暮らしておった。
ある年のこと、じいさまとばあさまは広回火という山の中腹に稲をを植え、その穂がたれ始めた頃に土製の鍋と糧をもち、その畑のに近くに小屋を立て、もうすぐ収穫できる穀物を猪や鹿から守っておった。
と、ある日の昼、じいさまがかの鍋でお湯沸し手いると、ばあさまがどうしたことか慌てて鍋を取ろうとし、沸いたお湯が溢れたばあさまの手にこぼれたので、「うわ!」とあさまが鍋を落小屋の外になげだした。おかげで永いこと使っていた鍋は壊れ、中のお湯も畑にごぼれた。じいさまは、ともかくばあさまのやけどしたところに少しの塩をぬったあと、壊れた鍋を惜しそうに拾い上げ、「これじゃ、もう使えん」とつぶやき、また鍋を捨てた。
実はこの鍋はじいさまとばあさまが湯を沸かしたり、米を炊く唯一つの炊事道具で、鍋が壊れたからには米は炊けないと二人は困り果てた。こうしてじいさまはため息つきながら小屋を出て歩き始めたが、ふと見ると畑の向うに竹林がある。そこでしばらく考えていたじいさま、何かを思いつき、小屋に戻った。
さて、じいさまは小屋から鎌を持ち出して竹林にいくと、そこには大きな杯の直径ぐらいの竹がたくさん生えていたので、じいさまは若い竹を選んで切り出し、これで米を炊くことにした。そして昼近くになると、じいさまは竹を節ごとに切り、泉の水できれいに洗ったあと米と水をいれ、竹を鍋として火に掛けた。こうして竹に入れた泉の水が沸騰すると米の炊ける香ばしさが漂い、小屋の中はその匂いでいっぱい。
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