山菜の煮物を食べ、少し力がついたのか、爺さんは少し元気が出たようで、兄弟の出してきた穀物の種を見ると、「鍋に水をいれ、それを火に掛けなさい」という。
そこで兄弟は爺さんに言われたとおり、水を入れた鍋を火に掛けると、爺さんはかの穀物の種を鍋に放り込み、蓋をした。
「もうすぐ、おいしい米のご飯が出来る」
「え!!米?」
「そうじゃ、これは米というおいしい穀物じゃ」
「でも、お爺さん、鍋に一粒入れただけだよ」
「安心しなさい。すぐにわかるから」と答えたので、兄弟は黙って見ていた。
やがて「もういいぞ、蓋を開けてみなさい」と爺さんが言うので弟のほうはそっと蓋を開けてみた。
す ると、鍋には一杯の香りがよい熱々の米のご飯ができたいた。こうして爺さんを含めた三人は、うれしくなり、その熱々のご飯を腹いっぱい食べ、犬もご馳走になり、囲炉裏の側で寝てしまった。
翌日、兄弟が起きてみると、爺さんは行くべきところに出かけると言い出し、家を出る前に兄弟に行った。
「お前たちの暮らしは貧しいが、二人とも気が優しく正直者じゃ。わしがもう少し米をやるから、お前らはそれを植え、庭に大きな穀物を入れる囲いを作り、稲の穂が出来たらそれを中ににしまい、芭蕉の葉をかぶせなさい。そして五日目に開けてみて見なさい」と言い残し、ふと煙になって消えてしまった。これには兄弟驚き、暫くは地べたに臥し、あれは仙人様だと気がつき、爺さんというとおりにした。こうして稲に穂がでるのを待って、それをかの囲いの真ん中に置き、芭蕉の葉をかぶせて五日目に見てみつと、囲いの中は米で一杯。
兄弟は、飛んで跳ねて喜び、かの犬もよこで吠えながら飛び跳ねていた。
こうして兄弟はそのときからおいしい白いご飯を食べられるようになったそうな。
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