「うん?誰か来たのか?」
と弟が出て行ってみると、誰もいない。しかし、犬は尚も後ろを向いて吠えて、尻尾を激しく振り出した。
「どうしたんだ?体に何か着いているのかな?」と犬の体を調べると、尻尾の先に数粒の何かがついていた。
「なんだ?これは」とそれを手にしてみたが、それは見たこともない穀物の種であった。そこで二人は近くの溝の横の柔らかい土地を耕し、その種を植え、毎日のように十分な水をやっていると、四日目にはきれいな芽が出てきた。喜んだ兄弟、それまで以上に心を込めて、これら芽を育て始め、秋になって元の芽は九本の穂に変わった。そこで兄弟は幾つかの穂を取って実を落とし、包んでいる殻をむいて食べてみた。
「うわ!兄さん、これは少し固いけど。うまいよ。こんなの生まれて初めてだ」
「ホントだ。これはうまいな」と兄弟は大喜び。そこで残った実をすべて種にするため大事にしまった。
そして数日後のある日の夜、どこからか白いひげを生やし、ぼろぼろの服をまとった爺さんが杖をついてヨタヨタと兄弟の家の門前に来た。
「これは若いお二人さん。このわしを哀れと思って一晩泊めてくれんかね」
このとき丁度山菜を煮ていた兄弟、爺さんを見ると慌てて爺さんを支え起し。早速、囲炉裏の側に座らせ、「お爺さん、大丈夫かえ?家には何もないけどどうぞ住んでください。さ、出来たばかりだよ。どうぞ」といって山菜の煮物を出し、また、残しておいた穀物の種を少し取り出し、殻をむいて出した。
「お爺さん。これは穀物の実だけど、おいしいよ。実はどうやって食べるのかおいら兄弟は知らないんだよ」
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