では、昔のお話にまいりましょう。題して「タチンと化け物」

　むかし、ロブとタチンがとなりあって住んでいた。ロブは100枚の銀貨をいう財産があり、すごい力持ちだが、肝っ玉が小さく、ネズミのようにすぐびくびくする。一方のタチンはかなり貧乏しており、家には一枚の銅貨しかなく、体も丈夫ではないのだが、なんと肝っ玉が大きく、閻魔さまさえ怖くないという。二人はまがきを隔てた家に住んでおり、ロブはまあまあの小屋、タチンがぼろぼろのわらぶき屋根の小屋に住んでいた。そして毎晩、ロブはその100枚の銀貨を声を出して数え、タチンはなにくそと一枚限りの銅貨をわざとボロ鍋の中に何度も落としたいたので、ロブはとなりのタチンも、住まいはボロいが自分よりも金があるも知れんと思っていたそうな。

　と、ある日の夜。ロブがいつものように100枚の銀貨を数えていると、不意に化け物が家に入ってきた。それは全身の皮と肉がない骨だけの人間みたいな奴で、これを見たロブは腰をぬかし、声もでなかった。この化け物は骨だけの手で、ロブの顔をなですぐに姿を消した。恐ろしさのあまり、ロブは気を失い、気がつくともう朝、しかし、自分の財産である100枚の銀貨はどこにもなかった。

　「うわ！なんということだ。大事な大事な俺の財産を化け物に取られてしまった！どうすればいいんだ！」とロブは嘆いたが、相手は化け物なので、どうしようもなかった。

　次の日の夜、かの化け物はタチンの家の前に現れた。この化け物、タチンが貧乏なこと知っているのか、家には入らず、皮の袋を肩にかけ立っていた。これを見たタチン、最初は急なことなので幾らか驚いたが、それは肝っ玉が太いのですぐに笑顔を作り呼びかけた・

　「なんだい？そんなところに突っ立っていて。おいらに何か用かい」

　これには化け物。幾多か拍子はずれ。たいていの人間は自分を見たら腰を抜かすのに、この男は笑って自分に声をかけてくる。ま、そんなことはいいか。今日は用事があるのでこいつに手伝わせようと話した。