「ひひひ!実は向うにまもなく息を引き取ろうという爺さんがいるので、閻魔さまがわしをよこして爺さんの息を引き取りに来た。おめえさん、ちょっと手伝ってくえないかい?」
なんという化け物だと思ったタチン葉、怒りを抑えて答えた。
「いいとも。おいら今は暇だから。手伝おう」
こうして、タチンは化け物について家を出た。途中、タチンと化け物は友達のように話す。
「ところで、おいら、人の息を引きとるなんてことは初めてだ。あんた教えてくれよな」
そこで、化け物は肩から皮の袋を下ろして答えた。
「これは簡単さ。この袋の口を病人の鼻の下の当てれば、袋はゆっくりと病人の息を吸い取ってしまうのさ。こうして病人は全身が震えだし、まもなく目をむくから、そのときに袋の口をしっかり結んでしまえば、病人はそれで終わりさ」
「うへ!おっそろしいねえ。なんだい!それで死んだ人を生き返られることは出来ないのかね」
と、タチンはわざとおびえた声を出してきく。
「それは,出きるさ・息を吸い込んだ袋の口を開けて死人の鼻の下に当てれば、息はゆっくりと死人の鼻から入り込み、目の色が輝き始め、暫くして生き返るというわけだ。」
「ということは。お前さんらは怖いものなしだね」
「そうでもないさ。わしが一番恐れているのは、青稞(チンコー)の麦だ。あれが頭に当たれば、雷に打たれたように痛くなる」
これを聞いたタチンは、そうか覚えておこうとおもったが、相手を騙すためには、自分も馬鹿になるしかないとおもい言い出した。
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