「そうだ。あんた、仕方ないからさ。種に使う残しておいたあの青菜を全部取ってきてきれいに洗って、茎も一緒に小さく切ってさ、なんとか味付けして、うまいスープとして出すしかないよ」
「なにいってんだよ。ばあさん。そんなもんで人様だませるもんか。部族のお偉方は口が凝ってるから、まずいスープ飲んだら、わしらがひどう目にあうぞ」
「だって、しかたないだろうに」
「そうかもなあ。なにしろ。うちにはなんにもねえからな」
ということになり、爺さんと婆さんは、祭りの日の朝早くから青菜を小さく切って煮込み始めた。ところが青菜は茎が硬いので、婆さんは絶えず薪を火に足したが、青菜の葉っぱだけがどろどろになり、茎はかたいまま。仕方なく爺さんは、硬い茎を一つ一つつまみ出し、鍋に残ったどろどろの葉っぱのスープをみて途方にくれていた。
これをみた婆さん。「あんた。なんとかしなよ。それだけじゃ。人様のところにはもってけないから。どうにか味でもつけないと」
これを聞いた爺さん、やっと我に帰った。
「味付けったって、何をいれるんだい」
「うちには、塩、唐辛子、にんにくと、えーっとそうだね。コウサイぐらいしなかいよ」
「そんなものか。えい!仕方ない。何とか味付けてくれや、ばあさん!」
そこで、婆さんは、塩、粉にした唐辛子とぶつ切りのニンニク、それに香りを良くすると言うコウサイを刻んでどろどろスープに加え、それを壷に入れてふたをしたので、爺さんはそれもって暗い顔をしながら、みんなと同じように統領屋敷にもっていった。
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