シーサンパンナー・(カ孟)海県(モウカイケン)の曹孟良書記(チーヌオ族)は長年、林業に従事し、象と人間の衝突事件について、数多くの現場を処理してきました。曹書記は全人代の代表でもあり、長年、国レベルでの農民への生態補償メカニズムの構築を訴え続けています。
この問題について、曹書記は実に分かり易く説明して下さいました。「究極のところ、保護と発展の問題に尽きる。人類は絶えず発展しているが、同時に、野生動物も保護しなければならず、両者の両立を図るべきだ。」
「象が人間に害を加えるようになったのは、本来、動物の世界と人間の世界にあるべき緩衝地帯が破壊されたからだ。自然保護区内は確かに良く保護されている。しかし、開発の程度が進化するにつれ、近年、保護区と隣り合っている保護対象でない『集団林』の伐採が進んで種の交流が途絶え、保護区は生態的に、孤立した島のようになってしまった。これにより、野生動物の活動範囲が縮められたのだ。」
「自然保護区では、今のような、単に『保護』するだけのやり方をそろそろ見直すべきだと思う。何よりも、科学的な方法で保護しなければならない。人間の活動はすべて大自然を破壊する、と考えられがちだが、必ずしもそうではない。以前、人間の活動が許された時代では、区内に喬木、潅木、草本植物などという、立体的な棲み分けがあった。けれど、今の保護区には、真昼間でも、太陽の光が漏れないほど、植生の密度が濃くなってしまった。」
曹書記は生態系全体の整備、自然保護区から住民を移転させること、及びそのための資金保証を提案し続けているのですが、ボトルネックはやはり資金だといいます。そんな苦悩をよそに、シーサンパンナーの野生象の頭数は、今も今後も増え続けるであろうという現状なのです。
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