「ええ、ありますね。それはやはり李金泉先生の厳しい指導の賜です。先生は、正しい歌い方や、唱え方を求める上、真に迫る演技を重視していて、人物の性格や身分の違いで、相手の役柄の動きに対してどんな反応をするのが正しいのか、といったことや、上っ面だけの演技ではなく、魂を持つ血の通った人物が必要だといつもおっしゃっていました。そのために、普段は様々な人物を観察することが大事だと思っています。公演するたびに、幕が開く前、自分を落ち着かせ、演じる人物の考え方に自分をとけ込ませることで、物語の世界に入ります。しかし、京劇の役者は、真に迫る演技だけでなく、他にも歌や台詞、しぐさなども重要な要素となるので、とても難しいことです。
この前、『紅灯記』という舞台に参加し、『李奶奶(李おばあちゃん)』という役を演じました。この舞台は伝統的な京劇できなく、現代劇でした。先生たちも高齢になり、台詞を一つ一つ聞かせて稽古することもできず、自分で努力していくしかありませんでした。先輩たちのビデオを見たり、録音を聞いたりして、1秒たりとも無駄にせず、稽古に没頭しました。寝るときも、何かいいアイディアが浮かんだら起きあがり、鏡を見て練習することもよくありました。少しでも自分の演じる役に近づきたかったんです」
「無我夢中だったんですね」
「確かにそうかもしれませんが、京劇の役者なら、誰でもそうすると思います」
「それが一番大事なことだと思いますか?」
「いいえ、自信こそ、何よりも大事なことだと思います。舞台に立つとき、何もかも忘れて自分を100%信じるべきです。役者にとって、舞台こそたった一つの世界であり、そうでなければ、一人前の役者になることはできないと思います」
容姿端麗な譚暁令は優しく微笑み、その目はきらきらと輝いていました。
「夢中になれることを仕事にしている私は、かなり恵まれていると思います。今の私はとても幸せです」
幸せ一杯の彼女を見て、京劇に関わることをしている私も、幸せなのかもしれない――そんなことを思いました。(楊)
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