■留学生倍増計画と中国への期待
――京都大学における留学生の現状についてご紹介お願いします。
京都大学の学生はいま、全部で2万5千人いますが、このうち、外国人留学生が1500人で、全体の6%ぐらいしか占めておらず、非常に少ないです。その中の600人ぐらいが中国からの留学生で、全体の約3分の1ぐらいで、量も割合も一番多い国です。
中国人の学生がだいたい優秀なので、「来てほしい」というニーズは強いです。ただ、先生は中国からの留学生を重要視している反面、それだけの(PRや学生募集)対応がまだできていないとも言えます。やはり国際関係の人間が少ない、対応できる人が少ないし、そのような部署も今まではなかった、などのことが考えられます。
新しい総長は、国際化をこれからの京都大学の使命として、力を入れています。こうしたことは、すぐには成果が出ませんので、少しずつ、改良していきたいと手を打ちつつあります。たとえば、スタッフを増やすとか、文書の英文化を進めるなどして、外から見て、京大も様々な変化が見えつつあると言われる段階です。
――今後の留学生受け入れ計画は?
京都大学は、大学のグローバル化に向け、今後3年から5年かけて、「留学生倍増計画」(現在の1500人から3000人に拡大していく)を進めていきます。これを「G30」計画と呼んでおり、国のサポートを受けています。また、日本語ができない留学生を受け入れるために、英語での授業を増やしていきますし、英語だけで学位の取れるコースも準備しています。
ホップ・ステップ・ジャンプではないですが、今後数年間はジャンプしていく段階に入り、大学が大きく飛躍する刺激的な時期になっています。
――この中で、中国からの留学生募集に関しての取り組みは。
これまで、大学として、中国を対象に何かをやる雰囲気はなかったのですが、世界に向けて開かれた京都大学を作る上で、ぜひ中国からの留学生も増やしていきたいと思っています。
今までは、日本に留学したい学生を考えた場合、大学のレベルの高さでは、京大は有利な立場にあるだろうと思っていました。ノーベル賞を受賞した京大のOBは7人に上っており、日本の大学で一番多い人数を誇っています。そういうところで学びたいという希望の学生も多いだろう、とずっと思っていました。しかし、これからは、それだけではダメでしょう。大学としての総合力が要求されます。
今までの留学生は、ほとんど大学院で学ぶ学ぶ博士、修士、あるいは研修生でしたが、これからは、もっと若い世代、すなわち学部から募集したいと考えています。
――それは何故ですか。
大学の国際化には、これが必要不可欠なことと受け止めているからです。
今、日本の中で、日本人を対象にだけ教育していては、視野が狭くなって大学はダメになるし、学生に与える刺激も少ないだろうということで、海外から若い学生をどんどん入れて、国際的な大学の姿に変えていこうとする動きがあります。そうなると、最も人口が多くて、近い国となると、中国になります。優秀な中国の学生さんに勉学に来ていただいて成果を上げる、また、卒業後、中国で就職したり、中国の大学に帰る、それでも良いじゃないかと思っています。多様な形で国際的なつながりを持てばと思っています。
■中国の若者に「ぜひ勉強に来ていただきたい」
――今後、厳しくなる大学間競争に向け、京都大学のPRポイントは?
国際的な活躍ができる人材を育てることです。世界各国から意欲のある人を応募し、開かれた大学作りをやっていきます。
京都大学では、リーディング大学院を通じて、世界で活躍できる人材の育成を育てることを目指しています。文科系も理家系も同じように勉学できるようなコースを設定して、国際社会に出て、自分の意見を述べることができ、国際的な機関でも企業でも活躍できる、そういう人たちを作ろうと、構想を練っています。
また、京大は研究を重んじる大学です。こういうポジションを生かし、世界に通用する留学生を育てていきたいです。ただ単に、京都で2年あるいは4、6年過ごすのではなく、自分の目標を成し遂げることができたという達成感をもって、じっくり勉強していただけるところがほかの大学にはない特徴的なことです。
――京大の個性的な人材育成プログラムに、どんなものがありますか。
一例を挙げますと、京都大学では、若い研究者(39歳以下)向けの「白眉プロジェクト」があります。毎年、全世界から600人の応募が殺到しますが、その中から20人しか採用しません。
これはオープンな枠組みで、京都大学の卒業生でない人でも応募することができるし、また、分野も問いません。採用された人は、5年間、何の義務もなく、好きなことを自由にやって良いのです。本当に研究に打ち込めます。5年間で100人を募集する予定です。選ばれると、互いに切磋琢磨して、皆一緒になって、ディスカッションをやって、アイディアを交換して、非常に面白いプロジェクトです。
――これから日本留学を考えている中国の若者に向けて訴えたいことは?
京都大学のひとつの特徴として、自由な学風が重んじられていることがあります。もちろん、それは何をやっても良いというのではなく、研究を育てるための土壌があるということです。
それから、京都という土地柄は非常に落ち着いているし、東京と比べて、少しゆったりしています。山あり、川あり、静かでじっくり考えることができる、そういう環境を提供することができます。
また、京大の良さはいろんな人たちがいること。これはぜひともアピールしていただきたいことです。色んな分野の人たちが集まっている総合大学なので、ここには凝縮された、知識豊富な人たちが住んでいること、こういう人たちと意見交換することで思わぬ発見があります。
さらに、研究に少し疲れると、美しい庭園もあるし、歴史のある建造物も多く、おいしい料理もあり、生活環境が整っています。しばらくこういう環境で勉学に励むと、人間として大きく成長するので、ぜひ京都大学に来ていただいて勉学と研究をしていただきたいですね。 (聞き手:王小燕)
大西有三さん 【プロフィール】
1968年 京都大学工学部土木工学科卒業
1973年 カリフォルニア大学バークレー校大学院博士課程修了Ph.D.
1994年 京都大学工学部交通土木工学科教授
1996年 京都大学大学院工学研究科土木システム工学専攻教授
2005年 京都大学図書館機関長・付属図書館長
2008年 京都大学副学長
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