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林家彬さん 経済学者~舵取りの手腕が問われる2010年

2009-12-31 22:39:52     cri    

■2010年以降の展望

――2010年は「第11次五ヵ年計画」最後の年でもあります。来年の中国経済で、最も注目していることは何ですか。

 2010年は中国政府にとって、マクロ・コントロールの手腕が問われる一年だと思います。なぜなら、経済成長が8%以上を保っているものの、過熱の様相も若干、呈しているからです。不動産価格もその一例ですし、資本市場でも金余り現象がかなり強く出ています。

 また、経済回復の基盤がまだ十分固まっていません。刺激策を一気にすべて撤廃すると、再び経済が落ち込む恐れもあります。ですから、その辺の舵取りとバランスが非常に難しいかと思います。

――気候変動対策などが今後の成長モデルに与える影響をどう見ていますか。

 間違いなく大きな影響が出ると思います。中国政府は2020年まで、単位GDPあたりの二酸化炭素の排出量を2005年より40%~45%削減するという目標を掲げています。これは大きな努力を払わなければ達成できない目標だと思います。そのため、省エネや今後の環境対策の強化という面に引き続き力を入れる必要があると思います。

 中国のこれまでの経済成長は労働力コスト、環境コスト、資源コストを全て低く抑えたことで成し遂げたものでした。しかし、今後はこのような成長パターンはもはや持続できません。今後は、資源、環境、労働力、いずれもコストが上がっていく方向にしなければならなりません。かつての粗放型経済成長を転換し、技術イノベーションをベースとする成長パターンへと転換していく必要があります。

■GDP第2位の中国、日本との付き合い方は?

――2010年、中国のGDPは日本を抜いて、世界2位になると報道されていますが…

 GDP総額は日本を抜いたといっても、中国人口が日本の10倍以上あるため、1人あたりのGDPはまだ日本の10分の1に過ぎません。ですから、日本に比べれば、まだまだ発展途上という受け止め方をしなければなりません。

 しかし、その一方で、日本を抜いて世界2位の経済大国になるということは、各種の世界舞台における中国のプレゼンスが一層高まっていくことは間違いないことと言えます。

――GDPランキングの変化が中日の経済協力に与える影響は?

 中国はすでに日本にとって最も重要な貿易相手国になっています。また、多くの日本企業も中国に展開しています。今後、両国の経済協力は緊密さが一層強まると思われます。

 ただ、かつては経済協力というと、日本は援助する側、中国は援助される側というの場合が多かったと思いますが、これからはもっと対等になり、互いに自分の優れた所を出し合っていく方向で協力していくことが重要になるかと思います。  

――両国は環境協力を一層強化していく必要があると良く言われていますね…

 環境協力において、中国が日本に対して大きな期待があるといえますね。日本は40年前まで、様々な公害や環境の問題に悩まされていました。その後、「公害国会」などを経て、様々な環境対策が打ち出されました。日本は多大な努力を払ったことにより、今は世界で最も進んだ省エネ、環境技術を持つ国となりました。

 一方、中国は今「世界の工場」と呼ばれ、冷蔵庫やデジタルカメラ、コンピューターなどの家電製品のおよそ8割が中国で生産されています。その意味で、中国は世界の台所ともいえます。台所は料理をつくるところですから、ゴミもたくさん出て、汚染も出ます。こういうゴミや汚染が一番出るところに日本の優れた環境技術を応用する、あるいは日本の環境対策や、制度設計などを中国に導入することは、地球環境の改善、CO2の排出削減にもつながると思います。

――中国の学術界は日本の技術をどのように見ていますか。

 私は土地問題、環境問題、資源問題などの研究をしており、これらに関する学会やフォーラムにも出ています。そのなかで、最近よく聞く話は、「日本の経験が最も参考になる」ということです。

 何故ならば、ほかの先進国に比べれば、日本の発展プロセスがかなり凝縮した形になっているからです。つまり、イギリスの工業化は150~200年でやり遂げたものであるのに対して、日本はその半分の時間しかかかりませんでした。中国は今、それをさらに凝縮した形をとっています。そのため、ほかの先進国よりも日本の経験はより中国の国情に近い、あるいは参考になると見られています。この点は間違いなく、学者の間でコンセンサスになりつつあると言えます。(取材:王小燕、黄恂恂、整理:王小燕、斉鵬)

林家彬さん【プロフィール】

1957年    北京生まれ
1982年    清華大学土木学部卒業
1989年    東京大学大学院博士課程終了、工学博士号取得
1990~1995年 国際連合地域開発センター研究員
1995年~現在 中国国務院発展研究センターにて勤務
       社会発展研究部副部長、研究員


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