■「中途半端な都市化」を是正せよ
――中国の住宅難問題は都市化プロセスの発展とつながっている側面もありますね。
おっしゃる通り、中国の都市化率が今、非常に速いスピードで進んでいます。都市化率は年間1%ずつのスピードで上昇し続けています。人数に換算すれば、年間約1000万人が農村人口から都市人口に変化することを意味します。これが、都市部における住宅需要を生み出す基本的な要因にもなっていると考えます。
都市化は中国の経済成長にとって最大の原動力といえます。数年前、ノーベル経済学賞を受賞した(米)スティグリッツ教授は、「21世紀、世界経済を動かすエンジンは2つある。アメリカのハイテクに中国の都市化だ」と言ったことがあります。それだけ中国の都市化が世界経済への影響が大きいというわけです。
――中国の今後の発展にとって、「都市化」が大事なキーワードのようですね。
中国の都市化率は2009年末現在、45.7%ですが、これからは年平均1%のスピードで伸び続け、2020年までに約65%までに上昇するだろうと見られています。なお、そのピークは2050年で、85%に達するだろうという予測があります。今後、都市の発展が中国経済の全般、そして、社会の健全な発展にとって非常に重要な意味があります。
ただ、今の都市化はある意味、「中途半端」な側面があります。つまり、農村からの出稼ぎ労働者がたくさん都市に居住しているものの、都市に定住はできていません。これら出稼ぎ労働者の市民化というプロセスが完成していないわけです。また、都市にもともと住んでいる人たちも後から入ってきた出稼ぎ労働者を仲間や同じ都市部の住民とは見なしていません。また、出稼ぎ労働者自身も心理的に、自分が都市の一員だというアイデンティティもありません。そのため、金融危機など何かあれば、多数の農民工たちが故郷に帰ってしまうといことになります。
そもそも「農民工」という呼び方自体が、中国の都市と農村を区別する二重制度の象徴でもあります。
――出稼ぎ労働者をいかにして都市に定住させるかが、健全な都市化を実現する鍵であるわけですね。
その通りです。そのため、都市部では「農民工」たちを対象とする住宅保障システムの整備をしなければいけません。今の公営住宅などはすべて都市住民だけを対象にしています。
実際、農民工たちは都市の富を作り出すために毎日頑張っている。しかし、農民工自身はその恩恵を受けておらず、社会保障の対象者にもなっていない。これは、かなり不公平なことと言うべきです。こういう不公平さを解消するためにも、都市部の社会保障や様々な社会福祉制度は農民工も視野に入れるべきだと訴えたいです。
――中国の都市化プロセスの進展を背景として、上海で万博が開かれます。上海万博の意義をどのように見ていますか。
これは中国が初めて主催する万博で、象徴的な意義があると思います。2008年の北京五輪に続くものであり、中国の二大成長センターである北京と上海がこれから世界のメガ・シティーの仲間入りを果たします。実際に、すでにある程度メガ・シティーの様相と呈しています。ですので、世界の成長センターとしての中国の地位がこれからも一層強固なものになるという意味もあります。
また、中国はこれから様々な都市が成長していきますが、そういう都市に対して、良い成長のモデル、模範が示されるという意味でも、上海万博の開催の意義は大きいと考えます。
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