(中原の「つぶやき」コーナーは、その半生を北京で過ごした一日本人のちょっとした物語となっています)
1993年当時、"買い物"と言えば今とは大きく違うものがあった。
それは『兌換券』。
今では中国人も外国人も皆『人民元=RMB』を使っているが、1995年に撤廃されるまで、外国人は一律『外貨兌換券=FEC』と呼ばれる貨幣を使用していた。
この2種類の貨幣の何が違うのかと言うと、当時は兌換券でしか買えないものがあったのだ。輸入製品がまずそれの筆頭で、外国人を対象とした学校の学費やホテル、レストランなどの代金なども兌換券でしか支払えなかった。そして最も大きな違いはと言えば、兌換券は外貨への両替が可能だったが、人民元は外貨に両替することができなかったことだ。(その逆も然りで、外貨では兌換券のみにしか換金できず、外貨を人民元に両替する事はできなかった)当時の政策上、外国人には人民元を手に入れる術がなかったし、中国人もまた、兌換券を手に入れることはできなかった。兌換券と人民元の個人的な両替行為も禁止されていたと聞く。(しかし、小さな商店などには当然兌換券のおつりがなく、兌換券で支払ったおつりが人民元でくる、なんてことは良くあった)
ただし、私たちが中国に来た1993年は、中国共産党第14期中央委員会第3回総会で人民元と外貨の兌換を導入する方針が打ち出されたため、兌換券の特権性が徐々に薄れていた時期で、私自身日本人学校に2ヶ月ほど通った時期を除いて、兌換券を使った記憶というのはあまり残っていない。ただ、人民元を使い始めた頃、なぜかわけもなくドキドキして、外国人だと思われないように極力会話を避けていた気がする。(もちろんそんな必要は全くなかったし、外国人だという事はバレバレだったと思うけど)
住居にしてもそうだけど、当時は外国人と中国人のラインがこれでもかというほどぐりぐりと引かれていて、常に自分が異邦の者であることを意識させられたのだった。
~つづく~
(この物語はフィクションです。独断と偏見的解釈もあくまでストーリーとしてお楽しみください)
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