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日本人スタッフのつぶやき128ー空き巣老人?

2012-02-27 14:51:03     cri    

 2月も末になり、日が長くなると共に気温も少しずつ上がってきています。団地の庭もまだ茶色一色ですが、いつの間にか小さな黄色い花が咲きかけていました。もうすぐ春です。

 昼の団地の庭では、孫を連れたお年寄りがよく散歩しています。子どもたちは、頭のてっぺんからつま先までこれ以上ないぐらいの厚着をさせられて、もこもこ姿が何とも可愛らしいです。大事な孫に風邪でも引かせたら一大事というわけでしょう。

 お年寄りと言えば、少し前に日本語部でニュース翻訳をしていたときに出くわしたことです。

 「空巣老人?! 何だ、これは?」

 ニュースの中国語原文に出てきた言葉に、一瞬、目が飛び出ました。

 以前も書いたように、私たち日本人スタッフはそれぞれラジオ番組に出たり、アナウンス指導をしたり、ビデオ番組制作の手伝いをしたりしていますが、その他に、毎日のニュースやホームページの記事の日本語翻訳チェックは、全員が交代で担当しています。具体的には、中国語ニュースから中国人スタッフが選んで日本語に翻訳した記事を、日本人スタッフがいわばネイティブチェックしているわけですが、翻訳というのはなかなか難しい作業で、中国語と日本語の狭間でいつも四苦八苦させられていますし、時にはこんな風に驚かされることもよくあります。

 さて、この「空巣老人」ですが、中国人スタッフは「空巣」の部分を省略して、ただ「お年寄り」としか訳していませんでした。前後の流れから言って、さすがに「空き巣狙いの老人」という意味ではなさそうでしたが、こういうときは辞書で確認するのが一番。中国語と日本語は同じ漢字を使っているので、何となく漢字をそのまま使ってしまい間違えてしまうことが多いので、小まめに辞書を引くことにしています。でも、「空巣」なんて中国語は見たことがないなあと思いながら探してみると、新語として「空巣家庭」という言葉が載っていました。

 【空巣家庭】  子供が巣立ち老夫婦だけが残った家庭(小学館中日辞典)

 なあるほど、そういうことか、と納得。中国も農村から都市への大移動や核家族化が進んで、老人だけが残される家が多くなり、それが社会問題にもなっています。そこで出てきた言葉がこの「空巣家庭」であり、残された老夫婦が「空巣老人」というわけなのでしょう。

 さて、意味は分かりましたが、日本語のニュース原稿の中でこの「空巣老人」をどういう日本語にするか。いろいろ考えましたが、どうもしっくり来ない。

 中国各地でボランティアが活躍しているというニュースの一部で、ボランティアがそうしたお年寄りを世話しているという話題なのであまり厳密に翻訳する必要はないと思い、結局、意味はちょいずれだけど、まあ、同じ意味だよなと思いながら「身寄りのないお年寄り」としました。でも、もっといい訳があるんじゃないかという思いが残り、何か座りが悪い気がしてずっと落ち着きませんでした。

 こんな風に中国語のニュースを読んでいると、いろいろ発見があるのですが、時には、ちょっと考えさせられることもあります。

 例えば、国際連合(国連)を中国語では「連合国」と書きますが、最初にこの字にぶつかった時は、ちょっと驚きました。中国人スタッフはもちろん、それをちゃんと「国連」と訳すので、間違えることはないのですが、「連合国」という字を見ると、われわれ戦後間もなく生まれた世代は、第二次世界大戦で日本と戦った、イギリス、アメリカ、ソ連などの「連合国」が想い出されてどきっとします。

 実際、英語で国連は"United Nations"ですから、まさに戦争中の連合国の意味なんですね。第二次大戦中に連合国の間で、戦後の国際組織をどうするか話し合った中から生まれたのが国連なので、呼称も引き続きそのまま使われたということですから、それをそのまま「連合国」と訳している中国語の方が正確なのです。日本では、外務省が戦後の国際組織としての"United Nations"を「国際連合」と意訳したことから、日本語では国連という言い方が定着しました。

 しかし、こんなところに、1945年の敗戦を境に全ての歴史をガラガラポンして再出発したと考えている日本人と、戦後も引き続き以前の形がそのまま続いているという旧連合国側の意識の違いが見えるように思います。

 ところで、「空巣老人」という言葉を見つけた時、ちょっと嬉しくなって中国語の出来る日本人スタッフに「ねえ、ねえ、ねえ、空巣老人って知ってる?」とメールを出しました。すると、皆さん、「中国語の授業で勉強したことがあります」とか、「ええ、知ってました。他の翻訳サイトでそのまま空き巣家庭と訳してたのを見て笑いました」とかクールな返事が返ってきました。やはり、CRIの日本人スタッフは皆さん優れ者です。


アカゲラ

 最後に今回の記事とは全く関係ない、また鳥の写真です。団地の庭にアカゲラが飛んできたのを、この冬3度目撃しました。一瞬のうちに木から木へ飛び移って行ってしまうので、なかなか写真が撮れなかったのですが、遠くから何とか1枚撮れたのが嬉しくて載せてみました。「空巣老人」の時のように興奮しているのは私だけという気もしますが…。(大野清司)

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