(山へのコースは、枯渇したかつての川筋を辿る。歴史を物語る地層が圧巻。)
さて、先回は私の趣味である乗馬についてお話いたしましたが、今回は私と共に天漠に参りました娘のお話を致しましょう。
私共大人は、乗馬に出かければ3時間は戻りません。
一旦お昼に帰還いたしますが、食事の後は再び3時間、お宿やお食事処のある砂丘を離れ、山を登り湖畔を駆けるわけでございます。
その間、娘は一体何をしていたのでございましょう?
実はその馬場は、ご主人、馬舎のお世話係、お食事処やお宿で働く人々全てがひとつの家族・親族を中心として、ひとつの村の村人でまかなわれております。
かつて(5年前)私が頻繁にここを訪れていた頃、まだ少女だった女子(おなご)らは母に、少年は青年に、父だった馬場のご主人は祖父に、嫁が来て、婿が来て、孫が生まれ、叔父叔母が集まり…と親族一同が勢ぞろいしているのでございます。
私にとっても、気心の知れた者ばかりでございます。
「良いよ、良いよ。子どもなんて見慣れてるからね。あんたはさっさと行っておいで。若い娘(注:この辺はやや誤解がございますが。笑)がわざわざ乗馬なんてする気が知れんが、ちょっとくらい泣いたって大丈夫だよ。すぐに子どもたち皆で泥んこになって走り回るさ」。
そう言って日に焼けた分厚い手で、私の背中をぽんっと押してくださるのです。
こうして私は、馬が居り、馬を追う大型犬が走り回り、猫のご一家が日向ぼっこをし、食用の羊が歩き、卵を生む鶏が子どものお尻をつつくその場所に、なんら躊躇無く3つになる娘を置いて行ったわけでございます。
何のことはございません。
すぐに同じ年のころの少女の真似をして、建物に入ろうとする馬追いのシェパードを「出去!(出なさい!)」と叱りつけ、その首根っこを捕まえ、迷惑顔の猫のご一家に摘んできた海棠花を押し付け、羊の角を掴んで振り回し、お尻をつつこうと寄ってくる鶏たちを棒切れ片手に追い掛け回しておりました。
――かわいい子には、旅をさせよ。
(中原美鈴)
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