さて、前回も吉田さんが、文化の違いについて語られていましたが。今回は私の実体験を。
空港から家に帰ろうと、タクシーに乗り込んだ時の話です。
私:「○○まで行ってください。」
運転手:「えー、○○か、近いなあ」
この運転手の一言を聞き、私は「またか」と思いました。実は空港でお客さんを待っているタクシーは、遠距離であればあるほど喜びます。というのも、一旦、空港内の道路に入り込んでしまうと、自由に出て行けず、お客さんを乗せるまで、長いタクシーの列に並ばなければならないからです。この時間は稼ぎにならずただ待つしかないのです。
事情は知っていましたが、運転手のこの言葉にはカチンと来ました。
そこで私は「じゃ、降りるよ。行きたくないなら他の車に乗るから」と怒りを露わにして言い放ちました。
こういう場合、運転手も負けずに言い返し、ひと悶着して、不快な思いを抱えることが多いのですが、この運転手は違いました。
「なんで、そんなに怒ってるの?飛行機が遅れちゃったわけ?」などとお門違いな事をいうのです。
自分の一言が原因だとは露ほども思っていない様子。私も意外な反応に臨戦態勢に入っていたことも忘れ、あなたの一言に怒っている、と説明しました。
すると彼は、慌てた様子で「ちがうよ、ちがうよ、コミュニケーションじゃないか。3時間もやっと待ってお客さんを乗せたんだ。その気持ちをさ、おしゃべりしようと思っただけだよ」と言うのです。
なるほどね~、と思いました。
中国で仕事をしていて、気付いたことがあります。日本はサービス大国と言われるだけあって、サービスの良さは抜群です。しかし、そのサービスを提供するために、現場の人間は自分を押し殺して、まるで機械にでもなったかのようにお客様に尽くします。
しかし、ここ中国では、仕事であっても、まず自分が基本です。
仕事モード、プライベートモードというのがあまりないように思います。
ですから、運転手さんも自分の気持ちを自然に吐露したのでしょう。
そうなると、これまでにも中国の方の言動をこちらが勘違いして受け取っていたことがたくさんあったんじゃないかと、思い返しました。言葉が理解できても、本当に理解することはなんと難しいことか。その解決は、やはり互いに話し合うしかないのですね。
今回は、怒りを露わにした私に、踏み込んで交流を図ってくれた運転手さんに感謝です。 (吉野)
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