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工藤泰志さん 特定非営利活動法人「言論NPO」代表(下)

2011-02-16 14:08:43     cri    

2011年の中日関係を斬る


地球問題での協力 中日関係が試金石

――去年の漁船衝突事件が、両国の国民感情に大きな傷を残し ました。

 一般の人は、お互いにあまりにも知らなすぎるわけですよね。僕























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たちは世論調査を毎回やっているんですが、お互いの直接交流で見ると、中国では、日本に行ったことのある人は回答者の1%以内に止まっています。その中で、メディアの影響もあるわけですね。非常に誤解があって、基礎的な相互理解が非常に未熟で、不安定です。この状況をきちんと解決していかないといけないですね。
 両国国民は心の傷を乗り越える時、大事なことは、きちんとコミュニケーションができるような交流がないといけないですね。友好のための交流というのはよくないと思っていますよ。喧嘩してもいいくらいの仲がいいですね。そういう本音でぶつかる関係を作れれば、仮に何かあっても理解はできるし、冷静な話ができるんじゃないか。そういう関係が大事ですね。

――日本の今後の成長にとって、中国の存在をどうとらえていますか? また、将来に向けて、理想的な日中の付き合い方をどう考えていますか?

 今の状況で見ると、多分中国という国は経済的な展開から見てやっぱり不可欠ですよね。少なくとも、今、必要な関係であることは事実ですよね。 ただ、必要だから我慢して付き合うのではなくて、国際的な課題に対して一緒に考えられるような関係にならないといけない。
 世界は今、かなり大きな多様化の時代に入っているわけですよね。先進国と新興国の間で、かなりの力の交代が始まろうとしています。が、その交代した結果、どのような地球を作っていけばいいのか、そういうことに関する議論はまったくなく、まだまだ非常にさびしい関係だと僕は思っているわけですよね。
 地球規模の問題に対して、共通したアジェンダを通じて、お互いが一緒に考えられる関係を作っていかなければと思っているわけです。やっぱり、そのひとつの試金石は日本と中国の関係だと思うわけですよ。
 日中関係は今まで、脆弱で、いい関係になかなかなりきれない。しかし、実際には、もうかなり密接な関係を作っているわけですよね。まずはこれを乗り越えて、いい関係を作って、互いに何かを話し合ったり、何かできるような関係を作っていくことが、今後の世界のシステム転換において、ひとつ大きな起爆剤の役割になっていくのだろうと僕は思っているんですね。

■ GDPよりも国民の幸せを

――昨年、日本は40年余り保ってきた世界第二の経済大国の座を中国にとって替わられました。日本国民として、やはり寂しい気持ちでその動きを受け止めていたのでしょうか。

 僕たちはそういうふうな考えはないです。世界のそれぞれの国は発展段階があるわけじゃないですか。日本も戦後、高度成長となりましたね。中国もやっぱり人口は多いし、資源も豊富だという形の成長をしている。だけど、その成長はいつかは必ず資源制約や、いろんな制約にぶつかるわけですよ。
 経済成長はそれだけ一方的に進むわけじゃなくて、いろんな課題を乗り越えていかなければならない。日本は、先に先進的な課題に直面しているので、それらの課題に答えながら、世界に対して役割を果たしていく局面に来ています。
 ただ、「成長、成長」だけで考えている人から見れば、中国はどんどん大きくなっているわけですよ。たとえば、自分たちの学校でも、急に勉強ができるようになっちゃっていたら、「あいつ何でできる?」なん、やっかんだりするじゃないですか。そういうふうな感じはやっぱりダメだと思っていますね。今、ちょうどその局面なので。
 一方、中国の人も僕が世論調査をして感じたのですが、自信過剰の気持ちはやっぱりあるんですよね。それよりも、一人一人が自分の人生の中でどう幸せになっていくのかということが大事だと思っているんです。そのために経済成長があるわけで、経済成長のためにすべてがあるわけじゃないです。

――中国人の自信過剰について、具体的にどういうところで感じましたか。

 去年の世論調査では、学生と一般市民に分かれて、同じ設問で世論調査を行いました。「2050年の中国と日本はどうなっていると思いますか」、という質問に対して、中国では一般市民の8割ぐらいが、「中国はアメリカに並ぶか、アメリカを抜いている」というぐらいのイメージを抱いていたのですね。
 ちなみに、同じ質問に対して、中国の大学生は非常に慎重な回答になっていて、3割ぐらいに止まっていました。つまり、若者の中では、けっこう冷静に考えるという状況もあるわけですよ。
 日本もバブルの時代に同じ状況があったんですね。アメリカの不動産を買ったりしていた時に、日本はなんかすごくなっちゃってね、どんどん日本は動くんじゃないかと思ったんだけど、その後つまずいたわけですよね。

――日本のかつての体験が中国で再演されるかもしれないことへの懸念でしょうか。

 心配というか、ある局面では、それもやむをえないと思うんですね。経済がここまでなってきたことは非常にうれしいことですから。しかし、それは、たとえば、10年、20年、30年、永続的に成長するっていうことはたぶんあり得ないと思うんですよね。
 今は勢いに酔っているのではなくて、基本的には、どのぐらい満足できる生活ができたり、生活環境が整ったり、自分の老後がどうなるかとか社会保障の環境がどうなるかとか、いろんなことで総合的に幸せかどうかを判断するじゃないですか。やっぱりある程度、ちょっと冷めた目で見る必要もあると思うんですね。

――言い換えれば、高度成長の今だからこそ、今一度自分たちの歩んできた道、これから向かう方向について冷静に見つめなおして、もっとしっかりとした成長ができるようにしてほしい、という中国政府への期待でしょうか。

 中国が発展することはうれしいことなので、それに対して、何かを求めたり、もっと冷めて考えろとか言うつもりは僕はないんです。ただ、今後のシステムチェンジに向かって、将来に対して非常に不安感を抱いている日本と、飛んでいく勢いである中国という両者が、同じ時代に並んでいるわけですね。そういう時、相互理解する際の意識の違いが何らかの影響を与えていることはないのだろうか。そのことを懸念しているだけです。
 やっぱり重要なのは、お互いが相手にとって巨大な隣国なので、互いに嫌いだと言っているのではなく、相互理解を深めていくことが大事じゃないですか。やっぱりそういうふうな意識問題がお互いの共通の歩みに対して、ちゃんとマイナスにならないようと、考えたほうがいいんじゃないかなと思っているだけですね。

 

新しい年、中日関係の基礎固めの年に

――これまでの「東京・北京フォーラム」において、「アジアの中における中国と日本」という視点からのテーマ設定が非常に多かったように思いますが、工藤さんから見て、将来のアジアにおける中日の果たすべき役割をどのように考えていますか。

 世界経済が今非常に不透明になっています。EUやアメリカなどの先進国は財政危機などあって順調な歩みではないですが、これに対して、新興国はけっこう動いています。
 そうした中、自由な経済活動は世界にとって大事なわけですよ。また、お互いが協力しあうという環境も必要だから、やっぱり、僕は、アジアはいろんな形で協力しあったりしてやるという方向は避けられないと思うんですね。
 その中で、中国も日本もアジアのいろんな課題にぶつかります。安全保障だけではなくて、環境や災害の問題などいろんなことがありますよね。それに向けて、力をあわせていくというやり方は僕はいいと思うんですね。そういう流れになることを期待しているわけですよね。
 当然、ただアジアだけではなくて、日本も、世界の課題に関しても、僕たちは責任を負わなければならないと思っています。

――2011年はいろんな意味で大事な年だと冒頭、お話されましたが、中日の関係発展にとっても同様なことが言えるとお考えですか。

 去年の漁船衝突事件が意味したことは、国民間の相互理解の弱さと政府間のコミュニケーションの不足です。そういうことをすごく感じました。
 ただ、僕は、昔このフォーラムを立ち上げた時から、仮に政府間関係がだめでも、それを乗り越えるような民間の力が必要だと思っているんですよ。そのためには、相互理解を進め、意見を述べあうという環境作りをすることが非常に大事なんですよ。
 だから、そういう意味で、僕は民間レベルの日中交流はまだまだ満足できる段階じゃないと思っているんですね。僕たちの未来はまだこれからなんですよ。日中関係の中の脆弱な部分、つまり国民的な相互理解の不足の状況を変える上で、今年は基礎固めが大きな課題だと思っています。

――「一年の計は春にある」という中国の言い回しがありますが、今夏の「北京・東京フォーラム」に向けての準備状況を紹介してください。

 日中関係について、将来的には僕は楽観視しているんですよ。ただ、去年の漁船衝突事件に代表されるように、大きな弱点も見られます。だから、きっちりと真剣に向き合うことは、僕は、やっぱり大事だと思っています。
 そのために、今年のフォーラム開催に向けて中国サイドと事前にしっかり意見交換をしたいと思います。僕たちの目標は、民間レベルの交流を強くする中で、アジアの未来に向かって動ける土俵を作ることです。だから、今は良いチャンスだと思っているんですね。困難がある時にこそチャンスがある。なので、ちゃんと手堅い一歩を踏み出したいと思っています。
 僕たちのちょっとした勇気で、たぶん歴史を変えることができると思っています。そのために、私もがんばっていきたいと思っています。(聞き手:王小燕、協力:李陽)

【プロフィール】 工藤泰志さん

 1958年生まれ
 横浜市立大学大学院経済学博士課程中退
 東洋経済新報社で『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任
 2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任

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