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工藤泰志さん 特定非営利活動法人「言論NPO」代表(上)

2011-02-14 17:25:01     cri    

 日本を見つめる

 2005年、小泉首相の靖国参拝などで冷え切った中日関係を民間の力で取り戻すことを狙いに、「第一回北京-東京フォーラム」が北京で開催されました(言論NPOと中国日報社の共催)。その後、このフォーラムは、両国の国民感情に関する合同アンケートの実施とともに、毎年、北京と東京で交互に開催されてきました。























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 第一回目の開催から「民間の議論の舞台で外交が動く」ことをミッションに掲げて回数を重ねてきましたが、今では中日間の「民間外交」の代表的な場として評価されています。

 2011年を迎え、中国と日本はそれぞれどのような課題に直面し、将来に向けて、どのようなつき合い方を目指せばよいのか。新年早々、今年のフォーラム開催の打ち合わせで訪中した「言論NPO」の工藤泰志代表に、2011年の時点で見た中日のつき合い方についてインタビューしました。                           

曲がり角の日本 変わらない外交の底流

 ――言論NPOが昨年末に行った「菅政権の100日評価アンケート結果」によりますと、日本の政治の現状について、「国家危機の段階」と見る回答者が最多でした。日本の政局の変化は、両国関係にも影響が出るファクターとして、中国でもかなり関心が持たれています。

 はい。アンケートは有識者2000人を対象に行われたものでした。
 日本は世界でもまれなスピードで高齢化が進んでいる国で、社会のシステムを変えなきゃいけない時期に来ています。この十数年来、日本の政治はこのことに気付いてきているのですが、その解決よりも国会の中での戦いをしているわけです。これに対して国民が非常に冷めているので、支持率も非常に下がっているいまの状況があります。

 日本では政権交代した際、かなりアジア重視という考え方を出しましたが、その後、ふらついているのは、政権が弱くなってる状況なのですよ。今、本当に日本が将来に向けて、どういうスタンスをとるのかということが、非常に見えにくくなっている状況があります。ただ、これは直さなきゃいけない段階に来ているので、多分日本の政治はこれから大きな変化が起こる時期に入っていくと思っています。

 一方、中国と日本との関係で見れば、両国ともアジアの大国であることは変わらない事実ですし、経済的にも非常に強いつながりがある。そのことを踏まえた上で、日本は国際社会での役割や国内の変革ということを、政治が国民に説明して、国民がそれを選ぶという循環に入っていくんだと思います。そうなってくれば、日本がどういう方向に向いていくかが、中国の人もアジアの人もよく分かってくると思うんですが、今はなかなか分かりにくい状態です。

 ――小泉政権の後、毎年のように日本の首相が交代しています。対中国の関係はそれで大きな影響を受けるものか、それともぶれないものが貫かれているのか。工藤さんのお考えを教えてください。

 たぶん後者のほうが正しいと思います。今の政治の交代は「ダメゲーム」なんですよ。どっちが失敗したかという形だけです。政治が大きく混迷する中、経済や国民レベルの往来ではアジアとの結びつきが強くなりつつあり、変わることのない大きな底流になっていると言えます。

 ただ、アジアに大きな変化が起こっていることをきちんと受け止めた上で、日本の政治は日本の未来に対してどういうふうな役割を果たすか、という大きな課題が問われています。

 首相が変わるから、本質的に外交も変わっていくというのではなく、流れは今の底流をベースにしながら、次に向けて大きな変化が始まっていくという段階になったと思います。

 ――「底流」の中身を具体的に言いますと?

 アジアという共通項をベースに、地域や世界にどう貢献していけば良いかを考えなきゃいけません。今はそういう段階に来ています。

 日本は戦後、非常に大きな経済大国でしたが、国際政治の中で大きな存在感を持ち、尊敬を集めたかというと、はっきり言って疑問があるわけです。これからは、たとえ経済的な力が弱まっていても、「日本はやっぱり素晴らしい国だ」という形に変わらなければいけないんじゃないですか。

 その時に、隣国やアジアとまったく関係なく生きるというのはありえないですよね。自分たちがいる地域の中における日本の貢献が問われ、一方でその中でも世界に対してもやっていくというステージですから。

 後は世界的に進んでいる少子高齢化ですが、日本で深化するスピードが非常に速い。高齢者が段々多くなる中でも、社会が維持され、その中で国民経済が回るという仕組みも作らなければいけない。これは日本が他の国より一足先に得た課題ですね。これに対して、日本が答えを出していくということは、世界に対してモデルを作れるということじゃないですか。

 そういうふうに、未来に関して、日本は本当な大きな曲がり角に今きていることを感じているんですよ。もっとも、困難はチャンスだと私は思っていますから、その中で、日本はどんどん良い国になっていくという流れを作りたい。
 

「強い個人」と「プロデュース力」で勝負


 ――
「失われた十年」や「失われた二十年」という言葉をよく聞きますが、日本は現状を突破するためにどうすれば良いのか、工藤さんの構想は?

 たぶん経済の規模でトップを競う時代はもう終わったんですよ。一人当たりの所得とか豊かさを日本は目的にすべきだと思います。

 だけど、一人当たりのGDPで見ても、日本は非常に後退してるんですよ。これを変えるために、経済の生産性を上げるしかない。また、構造改革が決定的に必要なのですよ。そのため、日本は世界に国を開かなければならないですね。その中で、日本の社会は新陳代謝をして、競争力がある経済体質に変えていくことが必要だろうし、何よりも強い個人の確立が大事です。
 個々が自立した形での挑戦!政府とかにすべてを甘えて、その中で、いろんな形でお金をばら撒いていく社会では、もう持続はできないだろう。自分たちの将来を自分たちの力で描いていて、それを実現して、自分たちが政治を選んでいくという循環が始まっていく。その結果として、日本の新しい仕組みができていくということのスタートが始まりました。

 日本という国は、危機があると、必ずそれを実現できるという非常に目が覚めるというのがあるんですね。たぶん日本の変化は将来的に見た時に、今年は本当にスタートになる年だと思います。

 ――新しい社会システムの構築に向け、日本の強みは何だと見ていますか。

 危機の時の対応力ですね。ものを設計したり、マネージメントする力というのは結構強いですよ。簡単に言えば、プロデューサー力とでも言いましょうか。いろんなもののシーズや人とものをつなぎ合わせて価値を創造していく力は、日本はかなり強いと私は思っていますね。たぶんこれからは、そこの競争になるだろうと思います。

                                        (つづく)
プロフィール】  工藤泰志さん

1958年生まれ
横浜市立大学大学院経済学博士 課程中退
東洋経済新報社で『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任
2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。 

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